2011/08/27

Japan League Best Game

マレーシアから帰国して一段落ついたので、振り返る暇のなかった、Japan League について考えてみようと思います。

今年のJapan League では私が昨年注文した通り、プレーヤーのリストがFIDEレイティングで作成されていました。これは海外からもプレーヤーの来るFIDE公式戦ならば、当然のことだと考えます。ただ、そのようにリストを作成することを事前に告知しなかった点と、下のクラスの表彰をJCAレイティングでやったという点は、来年に向けて改善すべきでしょう。

個人の戦績について言えば、南條君には負けたものの、他の6試合を全て勝ちきれたことを評価したいと思います。特に最後の2試合は自分でも満足の指し回しでした。佐野さんとの試合はチェス通信に解説を回し、こちらでは最終戦の馬場さんとの試合を扱おうと思います。

Kojima,S (FIDE2300,JCA2340) - Baba,M (FIDE2237,JCA2254)
Japan League 2011(7)

昨年同様に5/6で2人が並んだJapan Leagueでは、最終戦の結果に最終順位が委ねられることになりました。ところが、2Bの南條-上原戦は1時間かからずに白勝ちになったため、早い段階で私が南條君に追いつくためには、自身で馬場さんに勝つしかなくなりました。もとより全日本の借りを返すために勝つつもりでしたが、俄然気合が入ります。

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 d5

Grunfeld set-up に対してどう組むかは、私が1.Nf3を指し始めた頃から抱える課題でした。フィラデルフィアでは4.Qa4+をメインに考えていましたが、馬場さんとの試合のために用意した答えはこちらです。

4. cxd5 Nxd5 5. Qc2!?
このよく指されそうな一手が、実は今年、Topalov がKamsky を相手に出したばかりの新手だという事実には、驚きを隠せません。

5...Nb6 6. d4 Bg7 7. e4 O-O 8. Be3 Bg4

正確な手です。この局面をもっと古い試合で見たことのあるという人は(あまりいないでしょうが)おそらく、5.Qa4+ Bd7 6.Qc2 からの手順前後でしょう。

9. Ne5 Be6 10. Rd1 c6 11. Be2 N8d7

ここまでは両者とも自然な展開で準備通りでしたが、ここで何を指すか初めて悩みます。e5のナイトの扱い次第では、ここからの局面が大きく変わってきます。

12. O-O!?
今年指された試合で、12.Nf3,12.Nd3の両方をチェックしていましたが、前夜の準備でコンピュータが提案したこちらを選びました。ダブルポーンを作ってもラインを開き、g7のビショップを閉じ込めることで勝負します。

12...Nxe5 13. dxe5 Qc7 14. f4 Bc4

c4のマスを活用することは黒にとって重要な戦力だと言えますが、この白マスビショップの交換により、自分は白の優勢を確信することができました。残った2つのマイナーピースの働きが、黒よりもはっきりと良いためです。

15. b3! Bxe2 16. Nxe2 Rad8 17. Nd4!
もちろんルークは盤上に残し、ナイトをセンターに持っていって勝負します。黒が大きくアクションを起こしてこなければ、白はQf2-Qh4,Nf3-Ng5 というように、黒キングを攻めるマヌーバリングが可能です。このようなクイーンの大胆な切り替えによって相手キングを狙うアイディアは、直前の森内さんとのトレーニングで学んだものです。

17...Rd7?!

17.Nd4を指した直後から、それはないだろうと読んでいた手ですが、黒にとって代わりの正しい手を見つけることは容易ではありません。

18. e6!

ここは迷わず、一時的に1ポーンを捨ててもビショップをもらっておき、相手キングの安全を脅かしにいきます。

18...Bxd4 19. Bxd4 fxe6 20. Be5 Qd8 21. Qe2!
こちらも私の気に入っている手で、Qc4,Qg4 の両方に出られるように準備をし、e6のポーンを取り返しにいきます。特にg4は、h4-h5も加えて、黒のキングを直接狙うことができる好位置です。

21...Rxd1 22. Rxd1 Qc8?
ここは一時的にピンになるとしても、22... Nd7 と指して、ナイトをなるべく早めにキングサイドに戻すべきでした。Qb6+が入ればピンは解消でき、そうでなくとも、Qe8-Nf6でキングのディフェンスを強化できれば、黒はまだ戦えます。

23. Qg4!

e6を攻撃することで、Nd7-Nf6を妨害します。もちろん前述通り、h4-h5も強力な狙いです。これで試合が終わったかと思いましたが、まだまだ黒も粘ります。

23...Rd8! 24. Rf1!
すぐにポーンを取り返す、24.Rxd8+ Qxd8 25.Qxe6+ Kf8 でも白が優勢ですが、次の26...Qd7 からのクイーン強制交換が気になります。そこで私はルークを盤上に残し、直接キングを狙うチャンスをキープすることにしました。

24...Rd2 25. Qh3!

e6へのアタックは残したまま、Qh6の準備ができるのはここしかありません。

25... Qe8 26. f5! Nd7

黒が生き延びるためには、エクスチェンジを切る他ありません。私が密かに期待していた美しいフィニッシュは、26...Rxa2? 27.Qh6! Qf8 28.Qxf8+ Kxf8 29.fxg6+ Kg8 30.Rf8+! Kxf8 31.gxh7+- です。

27. Qh6 Nxe5 28. Qxd2
他に何か手がないものかと考えましたが、Nd7-Nf6 が有力なディフェンスになるため、大人しくエクスチェンジをもらっておくのが正解です。あとは時間の問題なので、解説は割愛します。

28...exf5 29. Qd4 Qb8 30. exf5 gxf5 31. Rxf5 Ng6 32. Qc4+ (32. h4) 32... Kh8 33. Qe6 Qd8 34. h3 Qd4+ 35. Kh2 Qb4 36. Qd7 (36. Rf7!+-) 36... Kg7 37. Rf3 Ne5 38. Rg3+ Ng6 39. Qg4 Qxg4 40. Rxg4 Kf6 41. Kg3 Kf5 42. Ra4 a6 43. Kf3 e5 44. Rc4 Ne7 45. a4 Ke6 46. a5 Nf5 47. Rb4 Nd6 48. Rh4 Nf7 49. Ke3 h6 50. g4 Kd5 51. Rh5 c5 52. Kd3 Ke6 53. h4 Kd5 54. g5 hxg5 55. hxg5 Ke6 56. Kc4 Kf5 57. Kxc5 Nxg5 58. Kb6 Kg4 59. Rh1 Ne6 60. b4 Nd8 61. Kc7 Nc6 62. Rb1 1-0
最終的にはこのような形に。やはりナイトでルークと勝負するのは難しいですね。

全体を通しても、これまでの馬場さんとの試合の中で、かなりうまく指せた試合だと思います。チェス通信に掲載する佐野さんとの試合も楽しみにお待ちください。

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