2011/09/04

暁星学園チェスサークル夏合宿

8月~9月の夏休み期間中は、各サークルにとって、合宿に適した時期と言えるでしょう。私の出身である慶應と麻布のチェスクラブ、サークルでも、8月に泊まり込みで合宿を行っています。そして9月頭の1日、2日には暁星学園チェスサークルが、静岡県の熱海で合宿を行いました。私はこの合宿にコーチとして参加してきましたので、その内容を簡単にですが、ご紹介しようと思います。

初日は熱海のホテルで直接、暁星のメンバーと合流します。生徒が中1から高2までの9名、引率の先生が1名で、チェスを指すのは私と生徒たち10名です。

3時半-4時の30分間でウォームアップのブリッツを行い、4時-6時で40分+1手30秒の持ち時間の試合を行いました。こちらは大体例年通りのスケジュールです。ペアリングはくじで決定し、私は高2の小林君と対戦することに。幸か不幸か、小林君の相手は過去2年間の箱根合宿でも私です。
試合前には、「普段よりも長い持ち時間なので、早く指しすぎないこと。考えた末に間違えてしまうのは仕方ないが、あと30秒考えていれば気付くようなミスをなるべくしないようにすること。」を心掛けさせました。その甲斐あってかは分かりませんが、最短の試合で1時間程度、最長で1時間50分程度かかりました。2年前には持ち時間を増やして負けるボードがいくつもあったことを考えれば、大きな進歩です。

試合後は、別室に移動して検討戦です。生徒たちだけでやらせるのはまだ厳しいため、私が全ボードを回ってピースの使い方や、試合中の考え方などについてアドバイスします。技術的なことを覚えることも大切ですが、試合後には検討戦をする、という習慣をまずは身につけてほしいと思います。
夕飯は6時20分-7時10分ぐらいまで。夕飯後は生徒たちと卓球をしました。6つ以上若い子たちとスポーツをするのは、なかなか厳しいものがあります・・・
7時半からは、夕飯前の試合から2つピックアップし、全員で盤を囲んで考えます。高2の橋本君が見せたクイーントラップは見事でした。そして9時過ぎからは、この合宿のために私が用意していたテーマに取り組んでもらいました。まずは、9人の生徒を2人と3人のグループ4つに分けます。そして私から各グループに1つずつ棋譜をプレゼントします。棋譜は以下の通りです。

[Event "New York Rosenwald"][EventDate "1956.10.07"]
[White "Byrne, Donald"][Black "Fischer, Robert James"]

1. Nf3 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. d4 O-O 5. Bf4 d5 6. Qb3 dxc4 7. Qxc4 c6 8. e4 Nbd7 9. Rd1 Nb6 10. Qc5 Bg4 11. Bg5 Na4 12. Qa3 Nxc3 13. bxc3 Nxe4 14. Bxe7 Qb6 15. Bc4 Nxc3 16. Bc5 Rfe8+ 17. Kf1 Be6 18. Bxb6 Bxc4+ 19. Kg1 Ne2+ 20. Kf1 Nxd4+ 21. Kg1 Ne2+ 22. Kf1 Nc3+ 23. Kg1 axb6 24. Qb4 Ra4 25. Qxb6 Nxd1 26. h3 Rxa2 27. Kh2 Nxf2 28. Re1 Rxe1 29. Qd8+ Bf8 30. Nxe1 Bd5 31. Nf3 Ne4 32. Qb8 b5 33. h4 h5 34. Ne5 Kg7 35. Kg1 Bc5+ 36. Kf1 Ng3+ 37. Ke1 Bb4+ 38. Kd1 Bb3+ 39. Kc1 Ne2+ 40. Kb1 Nc3+ 41. Kc1 Rc2# 0-1

[Event "Leipzig ol"][EventDate "1960]
[White "Letelier, R."][Black "Fischer, R."]

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 O-O 5. e5 Ne8 6. f4 d6 7. Be3 c5 8. dxc5 Nc6 9. cxd6 exd6 10. Ne4 Bf5 11. Ng3 Be6 12. Nf3 Qc7 13. Qb1 dxe5 14. f5 e4 15. fxe6 exf3 16. gxf3 f5 17. f4 Nf6 18. Be2 Rfe8 19. Kf2 Rxe6 20. Re1 Rae8 21. Bf3 Rxe3 22. Rxe3 Rxe3 23. Kxe3 Qxf4+ 0-1

[Event "London m3"][EventDate "1863.05]
[White "Steinitz, William"][Black "Mongredien, Augustus"]

1. e4 g6 2. d4 Bg7 3. c3 b6 4. Be3 Bb7 5. Nd2 d6 6. Ngf3 e5 7. dxe5 dxe5 8. Bc4 Ne7 9. Qe2 O-O 10. h4 Nd7 11. h5 c5 12. hxg6 Nxg6 13. O-O-O a6 14. Ng5 Nf6 15. Nxh7 Nxh7 16. Rxh7 Kxh7 17. Qh5+ Kg8 18. Rh1 Re8 19. Qxg6 Qf6 20. Bxf7+ Qxf7 21. Rh8+ Kxh8 22. Qxf7 1-0

[Event "Biel Credit Suisse"][EventDate "1997.07.20"]
[White "Anand, Viswanathan"][Black "Lautier, Joel"]

1. e4 d5 2. exd5 Qxd5 3. Nc3 Qa5 4. d4 Nf6 5. Nf3 c6 6. Bc4 Bf5 7. Ne5 e6 8. g4 Bg6 9. h4 Nbd7 10. Nxd7 Nxd7 11. h5 Be4 12. Rh3 Bg2 13. Re3 Nb6 14. Bd3 Nd5 15. f3 Bb4 16. Kf2 Bxc3 17. bxc3 Qxc3 18. Rb1 Qxd4 19. Rxb7 Rd8 20. h6 gxh6 21. Bg6 Ne7 22. Qxd4 Rxd4 23. Rd3 Rd8 24. Rxd8+ Kxd8 25. Bd3 1-0

これらのゲームは有名どころなので、ご存じの方も多いかと思います。ちなみに全て私が中学生の頃に勉強し、感銘を受けたゲームです。そして私から暁星のメンバーに出した課題はこうです。

「自分たちの担当する棋譜を並べて意見を出し合いながら、面白かったこと、疑問に思ったこと、感じたこと、考えたことなど、何でも良いのでまとめて、翌日他のグループに発表して下さい」

これは中高生には難しい課題だと思うかたもいらっしゃるでしょう。確かに、大学のサークルでやっても大変だと思います。しかし、この課題のポイントは、試合を正確に分析することではありません。私の狙いは以下のようなものです。(下に行くほど重要度が上がります。)

1. 単純に棋譜を並べる練習
2. 自然な駒組みや、アイディア、攻めの形を覚えてもらう
3. チェスってすごいんだな、と思ってもらい、刺激を与える(特にFischerの試合)
4. 自分の意見をまとめ、それを練りながら、他者へと伝えられるようにする

技術を教えることは重要ですが、それ以上に子供たちが自発的にチェスの勉強に取り組み、それを楽しいと思えなければ、あまり先に続かないと考えています。魚を与えるのではなく、魚を採る方法を教える、ということですかね。(少し違う気もしますが・・・)そういった意味では、面白い課題だったのではないでしょうか。

私の反省点は、なぜ9人を4グループに分けたのかということ。棋譜を1つ削って3人3グループに、3つの棋譜を渡せば良かったと今では思っています。1グループの人数を少なくする必要性は全くないので、最低グループは3人にするべきでした。暁星の皆、ごめん!

それでも、翌日の朝9時半頃からは4グループが、それぞれ考えたことを発表してくれました。最終局面からの変化や、気になった手の狙い、自分たちだったら途中でこう指す、この手がおかしいなど、発表内容は様々でした。それらの読みが正確かどうかは、この際全く問題ではありません。そのようにチェスの試合1つ取り上げても、自分たちで色々と考えられる、ということを知ってもらえただけで大きな収穫です。

暁星の皆さん、今年も合宿お疲れ様でした!また機会があれば一緒にトレーニングなり、合宿をしましょう。

2 件のコメント:

みとじん さんのコメント...

「課題研究」、なるほどと感心しました。教員のはしくれの私としては、興味津々です。

これからも工夫を重ねて頑張ってください。また別の機会の報告を楽しみに待っています。

Shinya_Kojima さんのコメント...

私も幼稚園児から社会人まで、幅広い年代のかたにチェスを教えていますので、それぞれどのような方法をとるか、常に頭を悩ませています。本人たちが何を求めるかでも変わってきますしね。

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