2012/05/28

CAISSA 2012 May 9th round - Backrank Trap -

一番下が私の戦績です。

ケチケメートのIM トーナメント、CAISSA は昨日、最終戦を迎えました。私は一昨年敗れたイングランドのFM にきっちり勝って、4勝1敗4ドローの6ポイントいう戦績で、トーナメントを終えることができました。振り返ってみれば、FS もCAISSA も連勝で始まり、連勝で終わったんですね。IM ノームこそ逃しましたが、3つ勝ち越しの、10人総当たりのトーナメントで2位という結果は、決して悪いものではないと思います。

Lyell, M (FM, ENG, 2184) - Kojima, S (FM, JPN 2264)
CAISSA 2012 May IM (9)

1. e4 c6!?



Lyell はAnti-Sicilian の知識と経験が豊富にあり、前回はそれに敗れています。そこで今回は定跡の知識よりも、自力の差が出やすい局面に持っていくことを気にした、オープニングチョイスにしました。

2. d4 d5 3. e5 c5 4. dxc5 Nc6 5. Nf3 Bg4 6. c3!?


6.Bb5 のメイン(私の実戦例はこちらから。)に比べればマイナーですが、b2-b4 とポーンを守るアイディアは、黒からすれば意外と厄介です。黒は1ポーンを捨てる代わりに、バッドピースがなく、展開が早いことを利用して勝負します。

6... e6 7. b4 Nge7 8. Bg5!?N



指された直後は、e5 を守る手のほうが自然だけど、こういう手もあるのかなぐらいに思いました。g6-Bg7 ができないので、黒は他の手を考えます。

8... Qc7 9. Bxe7?


こちらは完全におかしいと感じた一手です。おそらくNe7-Ng6-Nxe5 を嫌ったのだと思いますが、黒マスビショップを消してまで(さらには黒の黒マスビショップの展開を助けてまで)、このナイトを取らなければいけない理由はないはずです。ここからは自然な流れで、黒は優勢の局面に持っていくことができます。

9.... Bxe7 10. Nbd2 O-O


こういったポーンストラクチャーでは、a8 のルークをアクティブにするため、どこかでa7-a5 を突くアイディアもあると思います。しかし、私は別の構想が頭にあり、それを保留しました。

11. Be2 Nxe5 12. O-O Nxf3+ 13. Bxf3 Bxf3 14. Nxf3



ここがポイントとなる局面です。黒はポーンを取り返したうえ、白よりも良いポーンストラクチャーとビショップを持っています。さらには次の一手で、黒はマテリアルのリードを得ることができます。

14... b6!


相手のダブルポーン解消を手伝う手は少し指しづらいですが、a,c ファイルがオープンになり、c3 の弱点がはっきり攻めやすくなることを考えれば、黒としてはやっておくべき手です。そして10手目辺りからこの手をイメージし、...a5 を保留していたというのも、忘れてはならないポイントだと思います。

15. cxb6 axb6 16. Qb3 Rfc8 17. Rfc1 Bf6


黒は自然にc3 を脅かし、ポーンをかすめ取るチャンスを伺います。ちなみにこのポーンストラクチャーは奇しくも、一つ前の8R と同じですね。

18. a4


Lyell はc3 を取られた際にビショップがピンになるので、Ra1-a3 で逃げられず、c3 は(ひとまず)落ちないと読んだのでしょう。しかし、それにはシンプルな落とし穴があります。

18... Bxc3!



ところが、黒はこれを取ることができます。19.Ra3 Qf4! 20.Rxc3?? Qc1+! とバックランクメイトがあり、cファイルのピンは全く生きません。

19. Ra2 Qc4 20. Qb1 Qxb4-+


さらに2ポーン目も落ちて勝負は決まったはずでしたが、ベストのフィニッシュを逃したせいで、ここから必要以上にゲームは長くかかってしまいます。

21. Qc2 Rc4 22. Rb1 Qc5 23. Rb5 Qc7 24. g3 Bf6 25. Qe2 Raxa4?!



相手のバックランクの弱さを突いてポーンを取ったのに、自分のバックランクに弱さに目がいかないとは迂闊でした。25...h6 ぐらいでバックランクメイトを外しておけば、決定的な3ポーン目が落ち、相手のリザインもすぐだったでしょう。

26. Rxa4 Rxa4 27. Rxd5!


完全に見落としていました。黒は全く焦る必要はないですが、仕留めそこなかったのは事実です。

27... Ra1+ 28. Kg2 g6 29. Rb5 Qc6 30. Rb3 Kg7 31. h4 h5 32. Qe3 b5 33. Rb4 Rc1 34. Rf4


34. Rxb5?? Rc3! 35. Rb6 Qc7-+ ならば、白のルークは死んでしまいます。

34... Rc3 35. Qe2 Qc5 36. Nd2 Rc2 37. Qd3



これでクイーン交換が確定したので、ゆっくりとbポーンでプレッシャーをかける楽なエンドゲームになります。

37... Qc3 38. Qxc3 Bxc3 39. Ne4 e5 40. Rf3 b4 41. Rd3 Bd4 42. Kf1 f5 43. Nd2 Kf7 44. f3 Ke6 45. Nb3 Kd5 46. Rd2 Rc3 47. Nxd4 exd4 0-1



そして試合後、夕方の列車でブダペストに戻ってきました。今日から5日間は休みを取り、また6月2日から始まるFirst Saturday に参加します。おそらく、来月もIM ノームの基準は5つ勝ち越しだと思いますので、それを目指して、また勝ち星を積み重ねていきたいと思います。引き続き、応援していただければ幸いです。

アンダンテへのお土産は、写真下にあるラベンダーの石鹸にしました。

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