2012/09/01

Istanbul Chess Olympiad 4th round - Japan vs. IBCA -


3日目を終え、次のペアリングを確認しようとすると、なかなか日本が見つかりません。どんどんスクロールしていくと、かなり下のほうにありました。4日目の対戦相手はIBCA (視覚障害を持つプレーヤーのチーム) です。視覚障害というと、全員がブラインドチェスをやるようにも聞こえますが、完全に盲目の人から弱視の人まで、様々なプレーヤーがいます。

そして何より、オリンピアード代表になるプレーヤー達は、皆強いです!2002年のBled Olympiad、2004年のCalvia Olympiad では、日本チームはIBCA に敗れ去っています。しかし今年は日本も過去最強クラスのチームなので、そう簡単に敗れるわけにはいきません。IM 2人を擁する今年のIBCA にも一歩も引きませんでした。

Japan - IBCA 2 : 2


77.1 FM Kojima, Shinya 2282 - IM Meshkov, Yuri A. 2390 1 - 0
77.2 CM Nanjo, Ryosuke 2316 - IM Dukaczewski, Pjotr 2228 1 - 0
77.3 FM Watanabe, Akira 2278 - FM Mueller, Oliver Christian 2265 0 - 1
77.4 CM Iwasaki, Yudai 2137 - Ross, Christopher 2231 0 - 1

私と南條君で2人のIM をノックアウト!暁さんは劣勢ながらも、ドローに持ち込めるルークエンディングでしたが、最後の最後で受けを間違えて負け。私も一人で考えていてドローの形が分からない、難しい形でした。それでもフィンランド戦同様、平均レイティングが上のIBCA にドローは、悪い結果ではないでしょう。

El Salvador - Japan 4 : 0


47.1 WIM Zepeda Cortes, Lorena Marisela 2139 - WCM Nakagawa, Emiko 1798 1 - 0
47.2 WCM Sanchez Oliva, Ingrid Lizeth 1992 - Hasegawa, Emi 0 1 - 0
47.3 WFM Avelar Bonilla, Gabriela Maria 1939 - Kikuchi, Arisa 0 1 - 0
47.4 Garcia Mendez, Alcira Guadalupe 1782 - Hoshino, Karen 1640 1 - 0

体調不良気味の石塚さんを休ませた女子チームは、エルサルバドルに完敗。カレンちゃんは途中優勢だったようで、自身に相当ご立腹の様子でした。それはで、私のゲーム解説に移ります。

Kojima, S (FM, JPN, 2282) - Meshkov, Y (IM, IBCA (RUS), 2390)
40th Chess Olympiad (4)

1. Nf3 c5 2. c4 g6 3. d4 Bg7 4. e4 Nc6 5. d5 Nd4 6. Nc3 Nxf3+ 7. Qxf3 d6 8. Be2 Nf6 9. O-O O-O 10. Qd3 a6 11. a4



なんだかよく分からないオープニングでしたが、とりあえずは満足な形です。このストラクチャーであれば白は、将来的なe4-e5 を狙います。

11... Ne8 12. Bg5!?


黒のナイトはNf6-Nd7-Ne5 と来ると思いましたが、それはfポーンを突いて単純に撃退できます。そこで黒はf5-f5 とポーンを突く作戦に出ます。これによりeファイルが開くと予想した私は、e7 に予めプレッシャーをかけておくことを決めます。

12... h6 13. Bh4 Bd4!



これはうまいと思いました。ナイトがf6 に戻る前に、ビショップをアクティブにしておきます。

14. Kh1 f5 15. f4 Nf6 16. Bf3 e5?!


しかし、これが軽率な一手でした。白マスのポーンを取り除くことで白マスビショップをアクティブにし、d5 にアウトポストを作るのは、白が歓迎する展開です。

17. dxe6 Bxe6 18. e5!?



1ポーンを捨てて、白マスビショップのダイアゴナルを開きます。

18... dxe5 19. fxe5 g5?


黒は完全に受けを間違えています。当然私も19...g5 は候補手ですが、これが白良しになることを判断してのeポーンを突きでした。黒は素直に一時的なポーンサクリファイスを受け入れるしかありません。19... Bxe5 20. Qe3 Qd4 21. Qxh6 Bf7

20. exf6 gxh4 21. Bxb7



21. Rae1! (本譜を指した直後に、この手の存在に気が付きました。狙いとは当然、e6 のサクリファイスです。) 21... Bxc3 22. Qxc3 Rxf6 23. Bxb7 Ra7 24. Rxe6 Rxe6 25. Bd5 Qd6 26. Qh3+/-

21... Bxc3


21... Rb8 22. Bd5 Qxf6 23. Rae1! Rbe8 24. Rxe6 Rxe6 25. Ne2! Be5 26. Qxf5 Qxf5 27. Rxf5 Rxf5 28. Bxe6+ Rf7 29. b3+/- この1ポーンアップのエンドゲームは、白が勝てそうです。

22. Qxc3 Ra7 23. Rae1!



f6 のポーンを死守する重要な一手です。ビショップが逃げるのではなく、相手ビショップを狙うことでで、黒にf6 を取る暇を与えません。

23... Qd4?!


23... Rxf6 24. Rxe6 Rxe6 25. Bd5 Qd6 26. Rxf5+/-

24. Rxe6 Qxc3 25. bxc3 Rxb7 26. h3!?



ここでどう指すかは、かなり迷いました。a6 を取るのが素直そうですが、バックランクを先に外し、f5 取りのスレットを作ることにしました。26. Rxa6 Rb3 27. a5 Rxc3 28. Kg1 Kf7 29. Rxf5 Rxc4 30. Rc6+-

26... Kf7 27. Rxa6 Kg6 28. Rc6 Rxf6 29. Rxc5 Rb3 30. Ra1 f4 31. Rf1!


黒にf4-f3 と突かれてはカウンターのチャンスを与えてしまうため、それを止める重要な一手です。残り数秒で正確に指せたことは、大きな自信になりました。

31... Rxc3 32. Rf3 Rc1+ 33. Kh2 Ra1 34. a5 Ra2 35. Kg1! h5 36. Rb3+-



ここまで来れば、あとはオープンファイルからもう一つのルークを参戦させるだけです。まずは37.Rb6 を狙います。

36... f3 37. Rxf3 Re6 38. Rb3


黒のメイトスレットより先に、白がメイトスレットを作れること(厳密には、黒がメイトを止めるためにルークを退かなければいけないこと)を確認し、ゲームセットです。

38... Re1+ 39. Kh2 Ra4 40. Rb6+ Kf7 41. Rxh5 Rxc4 42. Rh7+ Kg8 43. Rd7 Kf8 44. a6 1-0



黒がaポーンを止めるために、ルークを捨てざるをえなくなるのも、時間の問題です。

イスタンブールに来て、ようやく大将としての仕事を果たしました。次の対戦はポルトガルで、再びGM 戦となります。4試合でGM3戦、IM1戦という、もうなんだか訳のわからない厳しい当たりですが、めげずにポイントを取りにいきたいと思います。


お昼のデザートに惹かれながらも、勝つまで食べないことを決断。しかし、夜は気にいったデザートがありませんでした(泣)


4日目のトップボード、インド対アメリカは2-2 のドローでした。


ロシア対中国は3-1 でロシアの勝ち。オリンピアードで毎回やらかすロシアも、ここまでチームは全勝です。


会場の外でも、モニターで一部の試合の様子を見ることができます。こちらはLi Chao - Jakovenko


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