2012/12/21

CAISSA GM December 7th round - Beating A GM -


GM Zlatko Ilincic, First Saturday HP より

CAISSA GM の7日目は、セルビアのGM Ilincic との対戦です。ブダペストとケチケメートのGM トーナメントには、しばしば顔を出す常連GMで、私は以前、ハンガリーのGM なのかとすら思っていました。

Ilincic, Z (GM, SRB, 2443) - Kojima, S (FM, JPN, 2340)
Caissa GM December (7)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. Nf3 Nf6 4. e3 g6 5. Nc3 Bg7 6. b4!?



オープニングは最近凝っているg6 Slavです。白はキングサイドのピースの展開を完了させる前に、クイーンサイドでスペースを取る、珍しい作戦を選んできました。

6... O-O 7. a4 Bg4!


これがベストなアイディアだと信じています。黒はc3 のナイトが浮いていることを利用し、早い展開で勝負します。

8. Qb3!?



白はポーンストラクチャーを乱してでも、ピンを外そうとします。代わりに自然に見える8. h3 Bxf3 9. Qxf3 には、9... e5! 10. dxe5 Nfd7!=/+ があり、すでに黒が満足な流れとなります。

8... Bxf3 9. gxf3 e6 10. Ba3 Nbd7 11. f4 Re8 12. Bd3 Ng4!


f6 のナイトは特に働きがないため、Ng4-Nh6-Nf5 とチャンスがあれば組み変えます。このマヌーバリングが、以前a6 Salv の勉強をしていた際に、同じポーンストラクチャーで見つけたものです。もちろん、ここでは白のキングがセンターに留まったままなので、f2、e3 を攻撃する狙いも追加されます。

13. h4 h5!



これが私が7... Bg4 を指した時点で思い描いていた黒の理想の形で、白はQd8-Qh4 を防いだ代わりに、h4 のポーンを弱めています。そこで、黒はこれを取りにいって勝負です!

14. Ke2 Bf6 15. Rag1 Bxh4 16. Qb1 Nf8!?


白は1ポーンを捨てた代償として、黒キングへのダイレクトアタックのチャンスを作っており、それに対してナイトを退いてg6 を守ります。コンピュータが提案する16... Qf6 とも迷いましたが、黒マスビショップが退けなくなることを危惧して、本譜をチョイスしました。

17. Rg2 Bf6 18. b5 Bg7 19. Nd1 dxc4!?



白はやや消極的ですが、ナイトを退いてe3 を守ることで、f2-f3 から黒のナイトを追い返せるようにしました。この直前までは、Qd8-Qd7、Ra8-Rd8 とd4 にプレッシャーをかけることで対抗しようと考えていましたが、ここに来てf8 のナイトを戦場に戻すプランに切り替えます。

20. Bxc4 Nd7 21. Bd3 Ndf6 22. f3 Nh6 23. e4?



時間切迫によるブランダー。私は慎重に読みつつも、白の危険なスレットはないと判断して、ポーンをいただくことにします。代わりに23. Bxg6! fxg6 24. Qxg6 Nf5 25. Nc3! ならば、ピースの代償あり(1ポーンピースなのに!)というのが、コンピュータの示したラインです。私は24... Nf5 で守りきれると読んでいましたが、黒から面倒なgファイルのプレッシャーを、緩和する方法がないのは盲点でした。

23... Qxd4! 24. Bb2 Qxa4 25. Nc3 Qb3 26. Bc2 Qc4+ 27. Bd3 Qb3 28. Bc2 Qc4+


この時点でIlincic は3回同一局面だと指摘してきましたが、私はまだ2回だと、これを撥ね退け勝負にいきます。3ポーンアップなので、黒としては当然の判断でしょう。

29. Bd3 Qb4 30. Na2 Qb3 31. Nc1 Qb4 32. Na2 Qb3 33. Nc1 Qa4



同じ手を繰り返したのは、手数を稼いで40手を迎えるためです。そしてここから再び、ゲームが動きます。

34. Bxf6 Bxf6 35. Rxh5 Bg7


35... Nf5! (このアイディアはナイトがh6 に退いた直後から頭にありましたが、この時点ですでに指してOK でした。)36. exf5 exf5+ 37. Kf2 Qxf4-+

36. Rh1 Rad8 37. Rgh2 Nf5!-+



h5 を取られた時点で、白がルークをhファイルに重ねてくることは読めていたので、いよいよこの手の登場です。白はこのナイトに活躍を許しても、このナイトを取っても、センターに残ったキングが大きな負担となります。

38. exf5 exf5+ 39. Kf2 Qxf4 40. Rh4?


40. bxc6 Qd2+ 41. Be2 bxc6-+ でも黒勝勢ですが、本譜ほど分かりやすくはないでしょう。

40... Bd4+ 41. Kg2 Qg5+ 42. Kh3 Bf2 0-1



最後はキングを端に追い詰めて、チェックメイトとルーク取りのダブルスレットで勝負ありです。自画自賛ですが、良いファイティングゲームだったと思います!

日本人で、GM に公式戦で勝ったことのあるプレーヤーは意外と少なく、両手の指で数え切れるぐらいでしょう。今年はオリンピアードで、南條くんがポルトガルのGM に完勝したのが印象的でしたが、彼でもそれが初勝利でした。他には羽生さんがPeter Wells に勝ったゲームは、雑誌などにも取り上げられ、非常に有名でしょう。

私にとっては、Wong Meng Kong、Al-Modiakhi、Rowson、Bakre に次いで、5回目の対GM 戦勝利で、前回の勝ちからすでに、3年半も経っています。思えばFM になってからは、初めてGM に勝ったんですね... ちょっと感慨深いです。今回の勝利で実感したことですが、GM というは、ちょっとチェスの強い普通の人間であり(ちょっとじゃなく強いGM もたくさんいますがw)、決して勝つことのできない超人ではありません。しっかりとチェスの勉強を続けていれば、勝つチャンスはいつか訪れます。それは、これから日本でチェスを始める若者の誰しもが、将来的に私に勝つチャンスがあるということでもあります。

アメリカなどでは2200台の若者が、非常に激しいファイティングゲームをして、GM を倒すこともしばしばあるそうなので(Shabalov は下によく負けると、以前誰かに聞きましたw)、私も今後一層頑張らないといけません。まずは今日のGupta とのゲームを制し、2つ目のIM ノームを手中に収めるのが、直近の目標ですね。初のGM トーナメントも、残るところあと3試合です!


今朝はやけに寒いと思ったら...


5月から正体不明だったこいつは、暖房器具でした。助けられています。

3 件のコメント:

Yumi さんのコメント...

Go Go Shinya‼ といったところでしょうか⁈ ぜひIMノーム取り、達成して欲しいです‼ 地球も滅びずに済んだところで、前向きに良い方向に進んで行ってください‼ 応援してます‼

匿名 さんのコメント...

お疲れさまです。Zlatko Ilincic vs Fabiano Caruana
という対戦がFSGM February 2006にありIlincicが勝っています。再戦でもhalf point以上取れるかどうか注目いたしますm(_ _)m

Shinya_Kojima さんのコメント...

ありがとうございま~す。
ここでノームが取れたら、帰国時までにIM が現実味を帯びてきますね。頑張ります!

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