2013/03/14

Memories of Hungary Vol.1 - 憧憬 -


Vladimir Kramnik に挑むPeter Leko, The Chess Drum's News Briefs より

日本に帰国したら書き始めようと思っていたのが、このハンガリーを振り返るシリーズです。ハンガリーで過ごした時間というのは私にとってまさに夢のようで、これまでの自分の人生で全くしてこなかった経験を、語りきれないほど多く積むことができました。シリーズの始めとなる第一回~第二回にかけては、私が中高生の頃からハンガリーに抱いてきた憧れと、旅立ちまでをまとめようと思います。

これまであまり語ったことはありませんでしたが、私は15歳頃から、いつかハンガリーに行ってチェスをしてみたいと思っていました。高校1年生の頃に突如、ハンガリー語のテキストを購入し、あまりの難しさにすぐ投げ出したのも、若気の至りというものでしょう(笑) 中学2年生頃から始めたGM の棋譜並べで、Leko やPolgar がハンガリーのGM だと知ったのがいつの頃であったか、記憶は定かではありませんが、チェスを始めた割と早い段階でハンガリーという国が、世界でもトップクラスのチェスの強豪国であるという認識は持っていました。

そして、私がハンガリーへの憧れを強める出来事が2004年、高校1年生の頃に起こりました。ハンガリーのトップGM であるPeter Leko が、当時の世界チャンピオンであったVladmir Kramnik に挑み、世界チャンピオンの座を狙ったのです。マッチの最中、私は毎日ライブにかじりついてゲームを鑑賞し、翌日は部室で検討戦を行いました。

その思い出深いマッチは、Leko が1Pリードしたまま最終14R を迎えましたが、最後の最後でKramnik が勝利を収め、7-7 のスコアでチャンピオン防衛となりました。もし最終戦でLeko がドロー以上を取るようなことがあれば、ハンガリーのチェスの歴史は大きく変わっていたでしょう。そして当然、Leko を応援していた私は落胆したのでした。


Leko の活躍を示すマッチのスコア, Carolus Chess より

しかし考えてみれば、私がなぜLeko を応援していたのかはよく思い出せません(笑) Kramnik のチェスも、Leko のチェスも、私はどちらも好きです。そのため、プレースタイルで応援するプレーヤーを決めたわけではないでしょう。歴史的に圧倒的な力でチェスの世界を牛耳ってきた、ソ連、ロシアという大国出身のチャンピオンに、ハンガリーという小国の戦士が勇敢に立ち向かっていったことに、胸を打たれたのかもしれません。(そういった点では、Fischer がSpassky を破ったマッチをリアルタイムで見ていた世代の感動は、私の予想を遥かに上回る物なのかもしれませんね。)最終的に敗れこそしましたが、マッチでは無敵と呼ばれたチャンピオンを、ロープ際まで追い詰めたハンガリー人の活躍は、私の記憶に強く焼きつくことになったのでした。

そうした出来事があり、Peter Leko、そして史上最強の女子プレーヤー、Judit Polgar を育てたハンガリーという国は、いったいどんな所だろうと考えるようになりました。翌年、高校2年生で当時の最年少記録を破って全日本優勝を果たし、海外大会にも足を運ぶようになった私ですが、憧れの地ハンガリーに向かうのは、さらに5年も先のこととなります。

Vol.2 に続く

Kramnik - Leko の結果や棋譜はこちらで確認できます。

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