2013/06/27

The Highest Level Training In Japan

今月は韓国のトーナメントに向けたトレーニングとして、羽生さんと個人的に2回お会いし、ラピッドとブリッツを数試合ずつこなしています。今日の試合から1つ、ゲームを紹介させていただきます。なお、ブログの不調で画像サイズが大きく表示されている可能性がありますが、あまり気にしないでください。

Kojima,S (FM, JPN, 2385) - Habu, Y. (FM, JPN, 2404)
Training

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 c6 5. e3 Nbd7 6. Qc2



Semi-Slav Anti-Meran はここまで7連勝中。私の大好物です。

6... Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O dxc4 9. Bxc4 b5 10. Bd3 Bb7 11. Rd1 Qc7!?


早めにh2 のポーンをアタックすることで、このラインの特徴であるNf3-Ng5 を防いでおきます。同じアイディアの11... Qb8!? も面白く、本譜とはまた違った流れになるでしょう。

12. Bd2! Rac8 13. b4!+/=



これがQd8-Qc7 に対して、もっとも有効だと私が考える手です。単純にc6-c5 を防ぐことで、黒の白マスビショップの働きを封じ込めます。また13... Bxb4 14. Nxb5! と進んでも、白の優勢はゆるぎないでしょう。

13... Qb8 14. a3 Rfe8 15. h3 h6 16. Rac1 a6 17. Be1 Rcd8 18. Ne4!


ゆったりと準備をしてから、ピースを捌きにいきます。

18... Nxe4 19. Bxe4 e5!?



c6 をいきなり捨ててくるとは意外でした。19... Nf6 20. Bd3 とシンプルに進めても、黒からはアクティブなカウンタープレーがなく、面白みがないだろうというのが、羽生さんの意見です。

20. Bxc6 Rc8 21. d5 e4 22. Nd4 Ne5 23. Qb3 Nd3 24. Rxd3! exd3 25. Qxd3+/-



黒のカウンターの軸であるアクティブなナイトを消してしまいます。2ポーンエクスチェンジのマテリアルで、ナイトが黒陣に食い込んでいれば、白のアドバンテージは十分だと直感的に判断しました。

25... Bxc6 26. Nxc6 Qc7 27. Bc3!


ビショップはいつまでも、e1 にいては仕方がありません。黒キングにプレッシャーをかけるように位置を改善します。

27... Qd7 28. Bd4 f5 29. Rc2 Kh8 30. Qd1 Qf7 31. Bc5 Qg6 32. Qf3?



ここまではほぼ完璧な試合運びだったはずが、終盤でやや緩手です。オープンファイルを作ることは、ルークを持つ黒にとって有利です。そのため、f5-f4 は最も警戒すべきアイディアでした。ここは焦らずに、32. Qd3 とクイーンを戻すべきだったでしょう。

32... f4! 33. Rc1 fxe3?!


試合後に羽生さんは、先にビショップを交換しておくべきだったと指摘しています。33... Bxc5! 34. bxc5 fxe3 35. fxe3 Qd3! ならば、黒は十分なカウンタープレーを作れており、形勢不明です。

34. Bxe3 Qd3 35. Bc5!




a3 を守りつつ、ここからは何度も黒マスビショップの交換を迫り、パスポーンを押し進める算段を立てます。

35... Qd2


35... Qxf3 36. gxf3 Bf4 37. Rd1 このポジションは、コンピュータではほぼイコール評価ですが、人間としてはこういったポジションを嫌がるでしょう。白はここから、残したクイーンでゆっくりとプレッシャーをかけるように指していきます。

36. Qd1! Qf4 37. g3 Qf6 38. Bd4 Qg5 39. h4 Qf5 40. Qd2 Kh7 41. Bc5 Qf6 42. Qc2+ Kh8 43. Qc3 Be5 44. Qc2 Bd6 45. Qc3 Be5 46. Nxe5!



手を繰り返した後、ナイトビショップの交換を決断します。

46... Qxe5 47. Qd3 Red8 48. Rd1 Rd7 49. d6 Rxc5


ここで黒は焦れてエクスチェンジを返しますが、d6 にパスポーンが1つ残れば、勝ちには十分です。49... Re8 50. a4!+/= でも、白はゆっくりアドバンテージを拡大していけるでしょう。

50. bxc5 Qxc5 51. Qg6 Qe5 52. Kf1 1-0



ここで黒の時間が落ちて勝ち。持ち時間が少なくなったポジションでも、相手のカウンターを許さないように指すことは、これからの課題だと感じました。

羽生さんとは2回のトレーニングで、ラピッド1つ勝ち越し、ブリッツ1つ負け越しと、なかなか良い勝負をしています(笑)他には面白いと思ったポジションを互いに持ち寄り、こういった手はどうかと意見を出し合う研究をしています。色々と自分だけでは出ないアイディアを学ぶことができ、とても勉強になりました。羽生さん、ありがとうございます! トレーニングの成果を出して、韓国は良い戦績を残せるように頑張ってきます。

2013/06/25

My Best Supporter - Sho Inoue -


Nigel Short と対戦中の井上さん

つい先日、日本国内の新レイティング、S89 が公開されました。そこで新しく2000 を突破したプレーヤーがいます。それが、私の中学高校の5代上の先輩である、井上祥さんです。良い機会ですので、私が公私共に大変お世話になっている井上さんについて、今回はご紹介しようと思います。

井上さんとは私がチェスを始めてすぐ、麻布学園チェスサークルの部室で出会いました。とは言え、中学1年生のペーペーと、すでに引退して受験勉強に励む高校3年生では、ほとんど縁はありません。2003年の秋、大学生になった井上さんが、ジャパンオープンでチェスの世界に戻ってきた時からが、本格的な私たちの付き合いのスタートです。直前の東京オープンで優勝し、2000に乗るのも時間の問題だと思っていた私は、復帰したばかりのうえ、レイティングが300も下の井上さんにあっさり負け。ぽっきりと鼻を折られました。井上さんはこの後、岩崎さんと塩見さんにも勝って、Aクラスでの入賞を果たしています。

私が大学生になる直前、2007年の頭からは、私たちの付き合いが濃くなってきます。私の自宅から比較的近い場所で一人暮らしを始めた井上さんの下へ、一緒にトレーニングをやるために、私が通うようになりました。井上さんの部屋に泊まるのも当たり前で、午後4時から午前4時まで12時間、対戦と研究を続けるような日もありました。一緒にトレーニングをするようになった直後の2007年のカペルでは、井上さんは2200近いパフォーマンスを残しています。それが、この時のトレーニングのおかげだと本人から言葉を貰えたことは、私にとって大変光栄なことです。


2007年全日本選手権にて

ところが、こうしたトレーニングの中で、井上さんが国内レイティングを順当に伸ばしたかと言えば、そうでもありません。2005年には1892 まで到達したものの、その後、レイティングの上げ下げを繰り返し、1700~1900台を何年も彷徨うことになります。どうしてレイティングが2000 に到達しないのか、トレーニングに付き合っていた私も、そして当然のことながら本人も、長い期間悩んでいました。

そういった経緯もあり、2013年の今年、井上さんのレイティングが全日本での好調を受けて2000 を突破したことは、私たち2人にとって大変喜ばしいことです。麻布学園チェスサークルのOB では、東芝さんに次いで、おそらく19人目となります。井上さん、おめでとうございます。2000という数字に満足することなく、今後は2100、そしてそれ以上を目指してください!

井上さんが2000 に到達できたのは、勉強や仕事が忙しい時期でも、こつこつと時間を作ってトレーニングや研究、大会への参加や自分の試合の復習を繰り返してきた、努力の賜物だと私は思っています。2008年の秋に医学部卒業試験直前にもかかわらず、北京で開催された大会に参加したことは、医学部生にとっては信じられないことでしょう。そういった井上さんのバイタリティは、私も見習っていかなければいけないと思っています。

現在、井上さんには、私のIM へのチャレンジを応援をしてもらっているとともに、仕事のやり方や今後の方針についても、様々なアドバイスをいただいています。さらにはあまり知られていないことかもしれませんが、今週から韓国で開催されるアジアインドア&マーシャルアーツゲームズの、チェス日本代表チームの担当医師(NFドクター)も引き受けていただいています。(韓国には同行しませんが)今後も、井上さんとは長い付き合いになるでしょう。私だけがお世話になるのではなく、少しずつでも恩返しができればと思っています。


井上さんの長男と私。現在は成長して、元気に歩き回っているそうです。

井上祥

1984年3月生まれ
2002年麻布学園高等学校卒
2009年横浜市立大学医学部医学科卒

2008年全日本選手権5位タイ
2008年北京World Mind Sports Games 日本代表
2013年全日本選手権7位タイ

2013/06/23

8x8 CARNEVALE 2013 Tournament Report


昨日、汐留で開催された大会の報告です。優勝は5連勝の後、同じく全勝の酒井くんをタイブレークで破ったAlex が優勝です。今年は全日本こそ崩れましたが、他の大会では安定した強さを見せていますね。私がポイントを削らなければいけませんでしたが、ピースアップの局面で時間が落ちました...

私はAlex に負け以外、要くん、中郡さん、岩崎さん、三阪さんに勝ち。不思議と強豪に当たり続けたペアリングは、韓国に向けたトレーニングになるようにという、運営側の配慮でしょう。肝心な内容はと言えば、良くなってから詰めが甘いゲームがあり、もう少ししっかり指さなければと思います。そんな中でも、唯一しっかり指せた最終戦のゲームをご紹介しておきます。

Misaka, S (2109) - Kojima,S (FM, 2409)
8x8 CARNEVALE 2013 (5)

1. Nf3 d5 2. d4 c5!?



久々に指す、Queen's Gambit Accepted です。私のコーチであるMisha の得意変化で、Slav とは別に使える武器として少し研究していました。

3. c4 dxc4 4. e4 cxd4 5. Qxd4 Bd7!?


クイーン交換は避けて、ポジションの単純化を避けます。

6. Bxc4 Nc6 7. Qe3 e6 8. O-O Qb8!?



2011年にAronian によって導入された手です。ややパッシブにも見えますが、e5 のマスを抑えつつ、白の出方を伺います。

9. Nc3 Nf6 10. Qg5?!


私はこの手はうまくないと考えます。クイーン交換は白のアドバンテージを消し、黒に楽な展開を与えてしまうことになるでしょう。ナチュラルな10. Rd1 ぐらいで、白が指しやすいのではないかと思います。

10... h6 11. Qg3 Qxg3 12. hxg3 a6 13. Be3 Rc8 14. Rac1 Bb4 15. Bd3 Ng4!



e5 のマスをコントロールしてナイトの位置を切り替え、白陣にプレッシャーをかけます。

16. Bb6 Nce5 17. Nxe5 Nxe5 18. Be2 Nc4


ここまでナイトを運び、黒は一息つきます。白がどちらのビショップを動かそうとも、黒は満足なポジションです。

19. Bd4 O-O 20. Na4?!



この手は、私の読みの中で早々に切り捨てました。確かにb6 のマスへの侵入は、白がクイーンサイドでチャンスを掴むきっかけになりそうです。しかし、エクスチェンジ取りのスレットを先に黒に作られては、分が悪いと言わざるを得ないでしょう。

20... Nd2 21. Rxc8 Rxc8 22. Nb6 Rd8!?


かなり悩んだ末、どちらの変化が勝ちやすいのかよく分からず、罠を張ってみることにしました。自然にルークを取りに行っても、もちろん黒は駒得できます。22... Nxf1 23. Nxc8 Nxg3 24. fxg3 Bxc8=/+

23. Rd1?



ルークを逃すべきは、cファイルかdファイルか。白は運命の選択を間違えました。これこそ私が22手目で期待したブランダーです。正しくは、23. Rc1 Bc6 24. Be3 Nxe4 と進めるべきで、こうしても黒は1ポーンを取れるので、優位に試合を進められるでしょう。

23... Bb5!


この静かな一手で白のピースを殺します。白マスビショップの交換を強制することで、d1 の守りを消し去るアイディアです。

24. Bxb5 axb5 0-1



少し珍しい形かもしれませんが、これで勝負ありです。白はd4 のビショップを逃がせば、Nd2-Nf3+ のディスカバードアタックが決まり、黒のエクスチェンジアップとなります。この後はジリ貧になりますし、潔くここでリザインとなりました。


女子トップ賞を獲得したのは長谷川さん。韓国での活躍も期待しています。


会場はイタリア街のバー、オリビエロです。40人で指すにはやや手狭ですが、雰囲気はとても良い場所でした。

今大会は、4月後半に企画を聞かされたときから楽しみにしており、内容も満足でした。8x8 チェスクラブの皆さん、大会運営お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。また次回のイベントを楽しみにしています。そのときには私も、IM を獲得できていればと思います!


2013/06/21

The Week In Chess 971


今日も明日も、チェスの試合というものは世界のどこかで行われています。そしてそれらの棋譜は、The Week In Chess というサイトで、一週間に一度まとめられ、公開されています。世界中のチェスプレーヤーは、棋譜が新しくアップデートされるたびに、それらを自分のデータベースに上書きし、最新の棋譜をチェックできるようにしているのです。私もここ数年は、この作業を欠かしたことはありませんが、日本のチェスプレーヤーの皆さんは、どれぐらいデータベースの更新をしているのでしょうか。

さて、そんなTWIC で公開されている棋譜ですが、最新版のTWIC 971 に、先月の全日本選手権の棋譜110局(正確には、不戦勝だった2局を除く108局)が入力されています。日本での試合がTWIC に送られることは、これまでほとんどなく、私のデータベースで確認できた一つ前の大会は、実に22年も前の1991年の全日本選手権の棋譜でした。いったい誰が、どのような目的で、TWIC に棋譜を送ったのでしょうか。(一つ、心当たりはありますが)少なくとも、JCA ではないでしょうね。

いずれにせよ、日本での試合の棋譜が海外に流れるというのは、良いことだと私は考えています。日本でもFIDE 公式戦をしているというアピールになりますし、今後これをきっかけに、日本と交流を持ちたいと考えるマスターが出てくる可能性もあるでしょう。2009年にSam 経由で全日本の棋譜がChess Today で扱われるという出来事もありましたし、こういったことは積極的にやっていくべきだと思います。TWIC では、全日本の棋譜を扱ってくれることが今回の件で分かったので、次はどうでしょう。思い切って、Chess Games なんかに棋譜を出すのも、面白いかもしれませんね。

The Week In Chess

2013/06/20

8×8 CARNEVALE 2013 直前再告知


6月22日(土)に予定されている、汐留での大会まであと二日と迫ったので、もう一度告知の記事を出します。大会の詳細と、現在までのエントリーリストは、以下のページから確認ができます。

8x8 Chess Club
8×8 CARNEVALE 2013 エントリーリスト

リストを見る限り、参加者は30名に到達したようですね。これも全て、運営側の努力の賜物でしょう、素晴らしいことです。まだエントリーは受け付けているはず(当日も可)ですので、まだ参加を迷っている方は、この機会に是非どうぞ。リストには名前のないゲストも登場する可能性があるそうなので、それも楽しみにしておきます。

この日は学生チェス連盟の主催で、新人戦も開催される予定です。そちらにも20名を越える参加者がいると伺っているので、今週土曜は都内で50名以上がチェスを指す日になりそうです! 私たち韓国への遠征組みにとっては最後のトレーニングの機会となりますが、参加者の皆さんが楽しめる大会になると良いですね。それでは明後日、汐留でお会いしましょう!

2013/06/18

An interview from Singapore


懐かしのCML の写真です。

シンガポールのチェスコラムニストから取材のメールが来ており、その記事が先ほど公開されました。一つ修正すべき点がありますが、すでに指摘はしたので、すぐに直してくれるでしょう。こちらでも、記事を紹介しておきます。

Six Questions for FM Shinya Kojima

ハンガリーでのチェス留学を経たことで、日本にもチェスを頑張る若いプレーヤーがいるということが、少しずつですが他国のチェスファンにも認識されているようで嬉しいです。イスタンブールのときは、Chessbase News の記事でも紹介されましたね。(そして馬場さんから厳しい突込みを受けましたw)

シンガポールからは別件でのオファーも来ており、他国のマスターと積極的に関わっていこうという姿勢が見受けられます。2007年に訪れたときも思いましたが、非常にプレーヤーの教育に熱心な国です。(日本のチェス協会も真剣に見習ってください!)こちらについては、また機会があればご紹介したいと思います。シンガポールとはどういった形になるかは分かりませんが、これから良い関係を築いていければと思います。

2013/06/16

快速選手権 Day2


快速選手権2日目の報告です。私は南條くんとAlex にあえなく負け。入賞を逃しました。弘平くんとの1ドローのみで、残り7戦を全て勝った南條くんが貫禄の優勝。2週間後からの韓国も、期待したいと思います。(もちろん私も頑張りますよ!)次いで6P の弘平くんと、Alex が2位、3位の盾をゲットしました。

5R Nanjo,R (2365) - Kojima,S (2408) 1-0 Caro-Kann Advanced
6R Kojima,S (2408) - Fukuda,T (1797) 1-0 Maroczy Bind
7R Kojima,S (2408) - Averbukh,A (2325) 0-1 Queen's Gambit Declined
8R Tanaka,T (1886) - Kojima,S (2408) 0-1 Caro-Kann Classical


過去に快速選手権の優勝経験もある弘平くんは、南條くんにドロー、Alex に勝って、ブランク明けとは思えない好成績での入賞でした。競合の復帰により、これから本格的に始まる夏のトーナメントも、楽しくなりそうです。

私は南條くんとのゲームはともかく、Alex とのゲームは勝ちたいポジションだったので、それを逆転されたのは大変悔しいです。悪くなったポジションを反省するとともに、短い時間での正確なプランの立て方を考えて、韓国への課題にしようと思います。

来週末は汐留で、8x8 主催の大会が開催されますので、そちらに参加される皆さんは、またよろしくお願いします。韓国前、最後の調整として、今度こそ良い結果を残せることを願うばかりです。

2013/06/15

快速選手権 Day1


Photo by Uesugi

快速選手権初日です。4連勝スタートを狙いましたが、馬屋原くんに3R でストップをかけられ、3.5/4 と半ポイント落として2日目を迎えます。4連勝の南條くんとの直接対決が、トーナメントの山場となることは間違いないでしょう。

1R Fletcher,W (1456) - Kojima,S (2408) 0-1 Caro-Kann Advanced
2R Kojima,S (2408) - Uchida,N (1826) 1-0 Dutch Classical
3R Umayabara,G (2045) - Kojima,S (2408) 1/2-1/2 Caro-Kann Panov Botvinnik
4R Kojima,S (2408) - Yamada,K (2205) 1-0 Grunfeld Russian


1年半ぶりの公式戦復帰となる弘平くんとのゲームは、完全にラッキーでした。今日は遅くなってしまったので、また後日、棋譜を公開しようと思います。それでは参加者の皆さん、2日目も頑張りましょう!


2013/06/14

Practical Rook Endings Vol.2 - Phildor Position -

第2回はルークエンディングにおけるディフェンスの基礎アイディア、フィリドールポジションを扱います。しかし基本と言いつつも、自分の試合では今まで経験したことがないな、と思って試合を漁っていましたが、自分でも完全に記憶の底に封印したゲームが出てきました。


Sakai, S - Kojima, S
Japan Open 2009

酒井くんとの初対戦のゲームです。気合で1ポーンを掠め取りましたが、ポーンは同じサイドにおり、さらには唯一のパスポーンは武器になりにくい端ポーンです。そしてディフェンス側の白キングが、そのパスポーンをすでにブロックできる位置にいることが重要です。

59. Re3 Kg4 60. Rb3 Rc2 61. Ra3 Rb2 62. Rc3 Rg2+ 63. Kh1 Rg3 64. Rc4


fポーンとhポーンを簡単に交換しては、すぐにドロー(ノーマルなフィリドールポジション)が確定するので、なんとか手を作ろうとしますが、白は当然ルーク交換は拒否して抵抗を続けます。

64... Rd3 65. Kh2 Rd2+ 66. Kh1 Rg2 67. Rc3


もちろん本譜のように進めて問題ないですが、ここはもう一つ、全く別のアイディアでドローにすることも可能でした。

67. f5+!? Kxf5 68. Rf4+!


Analysis Diagram

白はキングが動けない状態にあるので、前回紹介したステールメイトのアイディアでドローに持ち込むことができます。68... Kg5 69. Rf5+ Kh4 70. Rh5+ Kg4 71. Rg5+ Kf3 72. Rf5+ Ke4 73. Rf4+= 黒はどうあがいても、ルークのチェックを切ることができません。このアイディアも確認したうえで、本譜に戻ります。

67... Kxf4 68. Rxh3


黒はこれ以上キングとルークを動かしていても進展が望めないので、ここでポーンを交換することにしました。

68... Ra2 69. Rb3 g5 70. Kg1 Re2 71. Ra3 g4 72. Rb3 Ra2 73. Rc3



このようなポーンが一つだけのルークエンディングで、ディフェンス側のキングがすでにパスポーンをブロックできる位置にもぐりこんでいる形を、フィリドールポジションと呼びます。このとき、メイティングスレットに気をつけつつ、ルークをうまく活用すれば、ディフェンス側はドローに持ち込むことができます。ここでは他の手でも良いのですが、白は分かりやすくルークで3段目をキープします。それにより、黒はキングをこれ以上進めることができず、メイティングスレットを作ることができません。

73...Kg5 74. Rb3 Kh4 75. Rc3 g3 76. Rc8!


進展のない黒は、ポーンを3段目まで進めますが、このタイミングでルークを8段目に上げるのがポイントです。(もちろん、8段目でなくてもOK ですが)狙いは黒キングが侵入してきた際に、後ろからチェックをかけることで、連続チェックでのドローに持ち込むことです。

76... Kh3 77. Rh8+ Kg4 1/2-1/2



黒はこの後ろからのチェックを切ることができず、ドローに合意するしかありません。もしキングがg3 のポーンから離れていけば、白はRg8 と指してgポーンを取りにいくことができます。

フィリドールポジションは、私も実戦であまり出てきたことはないですが、だから知っていても役に立たないわけではなく、ルークエンディングにおけるルークの理想的な使い方を私たちに教えてくれます。それはルークは強力な駒であり、縦と横の利きのうまく使って、アクティブに活用すべきである、ということです。フィリドールポジションでは、まずは3段目にルークをおいて、横の利きで相手のキングの前進を止めつつ、最後は縦の利きを利用した後ろからのチェックでドローに持ち込みます。こういったルークの柔軟な使い方を知っておくことは、他のエンドゲームや、ミドルゲームでも大変役に立つでしょう。エンドゲームを勉強することは、チェスを勉強することである、ということがよく分かる一例だと思います。

次回はルセナポジションと、ルセナ+フィリドールポジションの応用を扱う予定です。2回に分けるかな?


2013/06/12

Nanjo ブログ


風の噂で存在することは知っていましたが、今夜とうとう発見してしまいました。今年で13年目の付き合いとなる、昨年の日本チャンピオン、南條くんのブログです。

業務用チェス倉庫


まだ記事は少ないようですが、試合をぱらぱらと見せてもらおうと思います。左側のリンク集にも追加しておきましょう。しかし、このタイトルはなんなんでしょうね...

2013/06/11

Practical Rook Endings Vol.1 - Stalemate -

先週、先輩と飲んでいるときに、ルークエンディングの試合を扱った記事を書けと命が下りました。その時は、最近の数試合を紹介して、一本の記事にまとめて書くだけにとどめようと思っていましたが、今日、自分の試合を見返していて、少し気が変わりました。実戦で出てくるルークエンディングは意外と数が多く、また内容も難しいです。そこでルークエンディングのみを扱う、新シリーズの連載を決めました。いつ飽きて投げ出すか分かりませんが(笑)、しばらくお付き合いください。

ルークエンディングは、勝ちを目指す側、ドローに持ち込みたい側の両者にとって、ルークやキングを如何に使うかがポイントとなります。しかし、本を読んでいくつかの基本を学んだつもりでも、いざ実戦で出てくると間違えるものです。そこでこの連載では、私のゲームの中から面白かったルークエンディングをピックアップし、どういった考えが重要か、どういった間違いが起こりうるのかといったことを、ご紹介していきたいと思います。自分の復習もしつつ、皆さんが自分でエンドゲームを指す、または自分のエンドゲームを振り返る参考になれば幸いです。


Yokoi, S - Kojima, S
Azabu Summer Training 2001
Position After 49...Kh3

昨年、自分の古い試合を何気なく見返していて、この12年前のゲームを発掘しました。これは私が麻布時代に始めて参加した、夏合宿での先輩とのゲームです。早い段階でポーンアップした私は、特に問題なく勝ちを収めたと試合後からずっと思っていましたが、並べなおしてみて自分のとんでもないミスに気がつきました。

50. Kg1 Rb4!


黒は2つのパスポーンを持ち、キングとルークも好位置にいます。(キングはパスポーンを守りながら、極力前進しており、ルークはもう1つのパスポーンを後ろから支えています。)あとはじわりじわりと指せば、白はツークツワンクで手がなくなるはずでした。

51. Rb1 b2??



間違いなく12歳の私は、何の疑問も持たず、勝利を確信してこの手を指したでしょう。白のルークが下がったことを利用してポーンを押し進める手は、ごく自然にも見えます。しかし、それはディフェンス側のアイディアを知らないが故のミスででした。

本譜では黒は焦りすぎなので、もっとじっくりと指すべきでした。代わりに51... Kg4! 52. Kxg2 b2 53. Kf2 Kxf4 54. Ke2 Ke4 55. h4 f4 56. h5 f3+ 57. Kf2 Kf4 58. h6 Rb7 59. Kf1 Kg3 60. Ke1 f2+ 61. Kf1 Kf3-+ ならば、白にはいよいよ手がなくなり、黒勝ちとなります。

52. Kf2??


白は唯一のドローチャンスを逃しました。52. Rxb2! Rxb2 と進めば、ステールメイトでドローです。黒がルーク取りを避けても、g2 のポーンが落ちるため、やはりドローとなります。

52... Rxf4+ 53. Kg1 Rf1+ 0-1


この試合は私にとって、初めてルークエンディングを体験したゲームで間違いないでしょう。この時にステールメイトのアイディアに気づいていれば、もっと早くにルークエンディングの面白さに目覚めていたかもしれませんね。

この連載の導入としては、こんな感じです。すでに私の試合からは、面白いルークエンディングのゲームを30ほどピックアップしているので、それを今後は随時、紹介していきたいと思います。次回はルークエンディングのディフェンスの基本である、フィリドールポジションを扱うつもりです。

2013/06/07

Memories of Hungary Vol.5 - Young Talents -

ハンガリーのIM トーナメントでプレーするのは、地元のIM+私のような、海外からのノームチャレンジャーのみではありません。ハンガリー国内でチェスを覚え、タイトルホルダーを目指す若きプレーヤーたちも、FS やCAISSA のようなIM トーナメントに、レイティングとノームを求めてやってきます。前回の記事ではIM のみを紹介しましたが、今回は若いハンガリーの実力者たちにスポットを当て、彼らとの戦績を振り返ろうと思います。今回はジュニアプレーヤの紹介であるため、私の対戦時とは大きくレイティングが変動している可能性があります。そこで現在のレイティングと、彼らの生まれた年を記しておきます。


FM Gledura, B (2421, 1999)
1ドロー

私がハンガリーで見てきたジュニアプレーヤーの中で、最も才能があると感じたのが彼、Gledura Benjamin です。ハンガリー生活最初のトーナメントである、昨年5月のFSで、一度だけ対戦しました。その後、GM クラスにチャレンジを続けた彼は、すでにレイティングを2400に乗せ、U14 世界ランキング3位の座まで上り詰めています。今年、IM タイトルを獲得することは間違いないでしょう。


Feher, A (2375, 1994)
1敗

8月のⅢ Sárkány - Aranytíz で対戦したFeher Adam とは、その夏の試合以降、顔を合わせていませんが、とても強いプレーヤーだったと記憶しています。私を破ったことでIM ノーム獲得をほぼ確実とし、IM Galyas、IM Berczes らに次いで、3位入賞を果たしました。私もその試合の結果次第では、まだノームのチャンスがあったので、とても悔しい敗戦でした。ハンガリーに戻ったら、リベンジしたい相手の筆頭です!


FM Korpa, B (2357, 1998)
2勝

ハンガリー滞在期間中、最初と最後のIM トーナメントで対戦し、ともにおいしくレイティングをいただいたのが、Korpa Bence です。私とのゲームでは、おやっ?と思う指し回しが目立ちましたが、他のプレーヤーとのゲームや、レイティングの変動を見ていれば、IM ノームを獲得できる、FM レベルのプレーヤーであることが分かります。


FM Csonka, B (2354, 1997)
3ドロー

セゲドに住む少年、Csonka Balazs とは、3回試合をして決着はつきませんでした。それでも3試合目は、私が2つ目のIM ノームを決めた重要な一戦であり、忘れられない対局です。レイティングは少し伸び悩んでいましたが、私がハンガリーを去った後に、ハンガリーのチャンピオンシップで好成績を収め、2350 に到達したようです。彼がブログで紹介するゲームも、楽しんで読ませてもらっています。


FM Tesik, C (2351, 1995)
1敗1ドロー

Tesik Csaba は、5月と8月のFS で対戦したナイスガイです。個人的に、ハンガリージュニアのイケメン賞状者!(顔がはっきり写っている写真がなくて残念...)チェスの実力も前述のプレーヤーたちに全く劣らないと思うのですが、2300 台に乗って以降、大分苦労しているようです。それでも、近い将来IM を獲得することは間違いないでしょう。

こうして整理してみると、90年代生まれのプレーヤーがことごとく2350を超えており、ハンガリーのチェスのレベルが如何に高いかが分かります。しかし当然のことながら、彼らも最初から強かったわけではなく、私との対戦時から現在にかけて、全員がレイティングを伸ばしています。私が滞在していた時期にちょうど彼らがおり、彼らとともにプレーし、ともに成長できたことは、私にとって大きな喜びです。(もちろん、別の時期に行けば、別の若者らがいるわけですがw)

しかし、上には上がいるもので、14歳でGM タイトルを獲得したRapport のように、さらに飛びぬけた才能もハンガリーには存在します。現在、最も注目株のGledura Benjamin でさえ、相当努力しなければ、将来的にハンガリーの代表に入ることは難しいでしょう。それでも、彼らの今後の成長と、大きな成功を願ってやみません。

最後に、今回紹介したプレーヤーたちは年齢も近く、非常に仲が良いであろうことを記しておきます。Gledura Benjamin のFacebook ページで、彼ら全員が非常に仲良さそうに写っている写真を見つけて、少し笑ってしまいました。おそらく、10歳前後から(Benjamin は今年でようやく14歳ですが)付き合いがあり、ともに切磋琢磨してきた仲間なのでしょう。日本でも近年はジュニアプレーヤーの大会が盛り上がっていますので、彼らにはライバルとして、そして友人として、長く付き合っていける関係を築いていってほしいと思います。


2013/06/04

Memories of Hungary Vol. 4 - Hungarian IMs -

ハンガリーでの長いIM ノームチャレンジを振り返るうえでは、そこでプレーするIM たちについて語らなければいけないでしょう。IM ノームを獲得するためには、一定数以上のIM との対戦が不可欠となります。そのために、ハンガリーでのIM トーナメントには、地元のIM が協力して参加し、IM トーナメントを成り立たせています。そこで今回は、彼ら一人一人との戦績やゲームを振り返ろうと思います。なお、紹介するIM のレイティングは、最後に対戦した際の数値を表記しており、対戦成績は、去年から今年にかけての滞在中の試合のみです。


IM Galyas, M (2412)
5敗2ドロー

私にとってハンガリーで最大の難敵だったのが、IM Galyas です。IM の基準である2400をキープし続ける実力を持ち、他国からのIM ノームチャレンジャーを阻む大きな壁となっています。1.d4 のオーソドックスなスタイルですが、非常にパワフルなプレーが持ち味で、私は7回の対戦で、とうとう一度も勝つことが出来ませんでした。秋以降の滞在で実力をつけた現在ならば、そう簡単に負けることはないと信じていますので、またハンガリーに渡った際の対戦をとても楽しみにしています。


IM Hajnal, Z (2364)
1敗2ドロー

ブダペストではなく、ケチケメートを拠点とするIM で、最も強いプレーヤーと言えば、Hajnal をおいて他にいません。現在は2300台にレイティングを落としているものの、Galyas に並ぶ高い実力を誇っています。1.e4 の非常に正統派のチェスで、私も苦戦を強いられました。(黒でやや弱気なのが、レイティング低迷の要因か)ハンガリーを去る直前の2月に、彼としっかり指せたのは私にとって良い思い出です。


IM Szeberenyi, A (2328)
2勝1敗5ドロー

ハンガリーでも最も多くの対戦をこなし、私がライバル視していたのが、Adam Szeberenyi です。なんと7回参加したFirst Saturday で、合計8回も対戦しています(笑) 7月のFS では、Galyas を差し置いて優勝した実力者で、彼のプレーからもたくさんのことを学ばせてもらいました。


IM To, N M (2287)
3勝1敗

ハンガリーにはベトナム系のプレーヤーが数人いますが、その中でもトップクラスの実力を持ち、10代でIM タイトルを獲得した天才肌のプレーヤーが、To Nhat Minh です。6月の初対戦では、彼には逆立ちしても勝てないと思えるような実力差を見せ付けられましたが、その後はなんとか3連勝。今回紹介した中では、唯一私よりも若いIM ですので、今後レイティングを2300、2400台に戻し、今後の活躍に期待したいIM の一人です。


IM Farago, S (2264)
1勝1ドロー

ここからの3人は、ブダペストのFS を守護する超ベテランIM たちです。彼らからまったくポイントが取れないようであれば、FS でIM ノームを獲得することは出来ません! Sandor Farago はトリッキーなプレーで相手を翻弄しますが、ベテランとして多くの試合経験があり、それに裏付けされた実力も兼ね備えています。3年前にハンガリーで彼と指したゲームは、私にとって、ベストゲームの一つになっています。


IM Lengyel, B (2252)
3勝2ドロー

ハンガリーではレジェンドとまで言われ、現在のトップGM であるLeko やAlmasi とも試合経験を持つのが、Bela Lengyel です。1.e4 の中でもソリッドなラインを好む彼を、黒で破るのはそう簡単ではありません。10月のFS で、Szeberenyi 相手に白黒両方で勝利を収めたのには、舌を巻きました。(ハンガリーのIM 同士が当たると、短手数でドローにすることもしばしばです。)


IM Szalanczy, E (2234)
2勝

Emil Szalanczy は黒で独特のオープニングにこだわりを持ち(Sicilian Dragon とOld Benoni)、時にはFarago 以上にトリッキーなゲームを披露してくれます。馬場さんとともに初めてチャレンジしたFS では、彼がベトナムの少年相手に目を疑うようなタクティクスを決めたのをよく覚えています。

この記事で紹介した以外にも、ハンガリーで対戦したIM はたくさんおり、彼らは隣国のセルビアやオーストリアから毎回来るか、ハンガリーに長期滞在しています。その目的はレイティングや試合経験よりも、参加することでオーガナイザーから得られる謝礼でしょう。(彼らは払ってプレーするのではなく、貰ってプレーする立場になります。)滞在費や移動費の支給がどうなっているか、興味はありますが、オーガナイザーに尋ねたことはありません。それは自身がIM タイトルを獲得してからのお楽しみにしておきましょう。

結局、ハンガリーに滞在した9ヶ月で(Istanbul Olympiad、London Chess Classic を除いて)、IM とは68試合をこなし、20勝17敗31ドローという戦績でした。レイティングを2400に乗せ、3つ目のIM ノームを獲得するためには、今後、彼らを相手にさらに好成績を残さなければいけないでしょう。現在は2200台にレイティングを落としているIM も、かつては2400に到達した実力者ですので、今後も油断せずに試合に臨み、彼らのプレーから学べるものを探していきたいと思います。

Vol.5 に続く

2013/06/03

松戸チェスクラブ例会 on June 2nd

宣言通り、昨日は松戸チェスクラブの例会に参加してきました。前回参加した2007年の例会は会場が北千住だったので、松戸の例会会場に足を運ぶのは初めてのことでした。三村くんの案内のもと、会場には開始時間ぎりぎりに到着し、発表された1R のペアリングは吉村先輩に白。前日に品川で散々指したというのに、なぜこういったペアリングになるのか(笑)

Kojima, S (2408) - Yoshimura, K (1920)
Matsudo Meeting (1)

1. c4 Nf6 2. Nf3 c6 3. Nc3 d5 4. e3 e6 5. d4 Nbd7 6. Qc2 Bd6 7. Bd3 O-O 8. O-O b6?!



この珍しい手を見て、おやっと思いました。c6 のポーンが浮いたことを利用して、白は早々に仕掛けます。

9. e4! dxe4 10. Nxe4 Be7


ここでナイトを交換してしまうと、c6 とh7 がダブルアタックになるのが、8... b6 が怪しいと考えるポイントです。

11. Bf4! c5 12. Rad1 Bb7 13. Nxf6+ Nxf6 14. dxc5



これで白はディスかバードチェックのスレットをつくり、ポーンを掠め取ることが出来ます。

14... Qc8 15. cxb6 axb6 16. a3!+/=


シンプルですが、この新手で白はポーンアップを保ち、優勢に試合を続けることができます。

16... Qc6 17. Rfe1 Rfc8 18. Bf1 Ba6 19. Ne5 Qb7 20. Be2 Qa7 21. Bg5 Rc7 22. Qb3 Bc5 23. Bxf6 gxf6 24. Qg3+ Kh8 25. Bf3 Rg8 26. Qh4 f5 27. Qf6+ 1-0



最後はバックランクの弱さをついてメイトに。ハンガリー以来となるSemi-Slav Anti-Meran でしたが、感覚は鈍っていないことが分かって良かったです。続いて2Rへ。

Kou, D (1866) - Kojima, S (2408)
Matsudo Meeting (2)

1. Nf3 d5 2. c4 c6 3. g3 Nf6 4. Bg2 Bg4 5. O-O


5. Ne5 Be6 6. cxd5 Bxd5 7. Nf3 c5 8. Nc3 Bc6 というラインを研究していましたが、これはまた別の機会のお楽しみにということで。

5... Nbd7 6. cxd5 cxd5 7. d4 e6 8. Bg5 Be7 9. Nc3 O-O 10. Qb3 Qb6 11. Qxb6 Nxb6



黒はクイーンを交換してしまいましたが、b6 のナイトはクイーンサイドでアクションを起こす可能性を秘めており、満足なポジションでしょう。

12. Ne5 Bf5 13. a4?!


この手は少し気になります。b3、b4 のマスを弱めても、aポーンを伸ばす価値があるかは疑問です。

13... h6 14. Bxf6? gxf6!



白はこの手を完全に見落としていたようです。ポーンストラクチャーを崩しても、e5 のナイトを追い返せば、黒は安全にc4 のマスにナイトを運べます。加えて、黒ますビショップをa3-f8 のダイアゴナルにキープしておくことも、白のクイーンサイドを攻めるうえでのポイントとなります。

15. Nf3 Nc4 16. b3? Na5 17. Nd2 Bb4 18. Rac1 Rac8


白が指した13. a4、16. b3 によって弱くなった、b3、b4、c3 を最大限に活かし、黒は駒得を確定させます。

19. e4 Bxc3 20. Rxc3 Rxc3 21. exf5 Rd3 22. Nf3 Nxb3 23. Rb1 Rxf3!? 24. Bxf3 Nd2



これで黒のピースアップ。この後は白のパスポーンを牽制しつつ、センターのパスポーンを押し進めて勝負を決めます。

25. Rxb7 Nxf3+ 26. Kg2 Nxd4 27. fxe6 fxe6 28. Rxa7 Rb8 29. a5 Rb2 30. a6 Ra2 31. g4 Nc6 32. Ra8+ Kf7 33. h4 d4 34. Kf1 d3 35. Ke1 Nd4 36. Rc8 Nf3+ 37. Kd1 Ra1+ 38. Rc1 Rxa6 0-1



白のパスポーンは後ろから止め、問題なく勝利です。一週前のサタデートーナメントに引き続き、松戸でも2連勝で6月も良いスタートが切れています。

2R終了後、同じく連勝の長谷川さんと試合をするか話をしたところ、悲しいことに拒否されたので(笑)、3R はパスして大江戸チェスの会の例会へと移動しました。参加人数は少ないものの、2000台のプレーヤーや他の日本代表女子もいたので、松戸から足を伸ばした甲斐はありました。皆さん、週末は各地でチェスに熱心なようで何よりですね。今週末は再び池上でのレクチャー+試合ですので、こちらもよろしくお願い致します。

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