2013/09/28

CAISSA 2013 September IM 7th round - Strong Passed Pawns -


日本のガイドブックには古い教会と記されている建物。正式名称がそうなんでしょうか...

5,6R で連勝となり、ようやく本来の自分のチェスが戻ってきたような気がします。昨年からのハンガリーでの最高連勝記録は3連勝なので、それに並びたい後半の7R ですが、相手はすでに3つ勝ち越しで、IM ノームのかかったインドネシアのSean です。Sean は午前10時からGM Gyula Sax のレッスンを受け、気合は十分といったところ。対して私は、セルビアに住むコーチ、Misha の1. d4 d5 のゲームにざっと目を通し、彼を迎えつつ準備を整えます。

Sean, W (FM, INA, 2338) - Kojima, S (FM, JPN, 2357)
CAISSA 2013 September IM (7)

1. d4 d5 2. Bf4!?



London System! 1. d4 にはこうしたサイドラインが多く存在するため、ある程度どのような駒組みで戦うか、誰しも考えておくと良いでしょう。私はしばらく前から、f4 のビショップに対しては、c7-c5 と決めています。

2... c5 3. e3 Nc6


3... cxd4!? 4. exd4 Nc6 ならば、Caro-Kann Exchange Variation になるため、Caro-Kann プレーヤーとしては、このチョイスもあり得るでしょう。しかし、わざわざポーンの交換を早めにしなくとも、イコアライズできるラインを考えてきました。

4. c3 Nf6 5. Nd2 Bf5 6. Qb3 Qd7 7. Ngf3 c4 8. Qd1 e6 9. Be2 h6



思い描いていた形の1つに到達しました。黒は展開、スペースいずれにおいても、全く不満がありません。

10. b4?!


試合後に彼がミスだったと指摘したのが、このクイーンサイドでスペースを確保するプランです。黒の将来的なb7-b5-b4 を止めるためにはシンプルそうな答えに見えますが、新しく別の問題を抱えることになります。

10... a6 11. a4 Be7!



黒として難しいのは、黒マスビショップを交換するべきか否かですが、私はここはビショップキープを選択しました。理由は後ほど。もちろん、11... Bd6 から黒マスビショップを交換して、e5 を巡る争いに入るのもありだと思います。

12. O-O O-O 13. h3 b5 14. Nh2


アタッキングプレーヤーの彼らしい手ですが、私ならばもう少しシンプルに指すでしょう。14. Ne5 Nxe5 15. Bxe5 a5!=/+

14... Qb7!



ここでクイーンの位置を変え、a6-a5 からのクイーンサイドのブレイクを狙うとともに、d7 のマスをナイトのために空けておくことにします。

15. a5 Rac8!?


白がクイーンサイドのポーンを固めてきたことで、少し頭にあったプランが現実味を帯びてきました。代わりに15... Nd7 からe6-e5 を狙うのもありでしょう。

16. Ng4 Rfe8 17. Bf3 Nxg4 18. hxg4 Bd3 19. Re1 Nxb4!!



私が黒マスビショップをキープしておいた1つの理由は、どこかでこのピースサクリファイスが有効に働くのではないかと考えたためです。このアイディアはかつて、2009年のベストゲームであるLi Hanbin 戦で成功させたことがあります。このタイミングでのサクリファイスを読み切っていたわけではないのですが、実戦的には黒の2コネクテッドパスポーンを止めなくてはいけない白の負担は、決して小さくないだろう考えていました。

20. cxb4 Bxb4 21. Be2 Bg6! 22. Rf1 Bf8!


1つ目はともかく、2つ目のビショップ退きはなかなか渋い1手だと自画自賛します。黒はゆっくりでも、黒マスのコントロールをキープしたうえで、bポーンを伸ばすことにします。

23. g5?!



この手は全く予想していなかったのでかなり面喰いましたが、決して良いアイディアではなかったでしょう。私が試合中、メインで考えていたのはルークをまわす手です。23. Rc1!? c3! (23... b4?! 24. Nxc4! dxc4 25. Bxc4=/=/+ このようにピースを切り返すのが、23. Rc1 のアイディアです。) 24. Nb3 c2 25. Qd2 Qc6!=/+ このようにして小骨のように突き刺さったc2 のパスポーンは、ピースの代償を補って余りあるものでしょう。

もう1つ、面白い変化としてコンピュータが挙げたのは、23. Bf3!? b4 24. Qa4 b3 25. Nxc4 Rxc4 26. Qxc4 (26. Qxe8 Rc8 27. Qa4 b2 28. Rae1 b1=Q 29. Rxb1 Bxb1=/+) 26... Rc8! 27. Qa4 b2 28. Qa2 ( 28. Rae1?! Bd3!-/+) 28... bxa1=Q 29. Rxa1 Rc6=/+ という変化です。こちらはピースを返すことで、最も危険な2コネクテッドパスポーンを消し去ってしまうプランです。ポーンストラクチャーの良さから、コンピュータは以前黒やや優勢評価ですが、実戦的にはこれが一番勝負できそうです。

23... hxg5 24. Bxg5 b4!-/+


白の手は明らかに遅く、黒のパスポーンに対抗する力を持っていません。こうしたポジションで黒にとってありがたいのは、黒はパスポーンを進めるというプランがわかりやすいことだと思います。私の経験上、このようなポジションではディフェンス側の白のほうが、正解である手を見つけるのが難しいものです。

25. Qa4 b3 26. Nb1 b2 27. Ra2 c3 28. Nxc3 f6!-+



e8 のルークにビショップで紐をつける同時に、g5 のビショップをアタックします。この美しい1手で白の29. Qxe8 のスレットは消滅し、黒からはナイト取り、ビショップ取り、プロモーションのトリプルスレットとなります! 28... Rxc3? 29. Rxb2 Qxb2 30. Qxe8 Qxe2 31. Be7 Kh7 32. Qxf8 Bd3 33. Ra1=

29. Bxa6 Qxa6 30. Rxb2 Rxc3 0-1


Sean はこの黒星で、今大会のノームチャンスを失いました。今月のFirst Saturday でも、0.5P 足りずにノームを取り損ねた彼には同情しますが、私もかつてこの地で涙をのんだ先輩プレーヤーです。私にも彼にも、まだ今後のチャンスがあるので、この悔しさをバネにまた頑張るしかありません。

一方で私は3連勝となり、ようやく勝ち越しに入りました。明日は1日2試合のハードスケジュールですが、午前中はレイティング最下位のVamos ですので、なんとか記録更新の4連勝を目指したいと思います!

9/21 15:30 FM Kojima, S 2357 - FM Lyell, M 2220 0-1
9/22 16:30 IM Meszaros, A 2273 - FM Kojima, S 2357 1/2-1/2
9/23 15:00 FM Kojima, S 2357 - Bird, A 2203 1/2-1/2
9/24 15:00 FM Kojima, S 2357 - Rudakov, A 2209 0-1
9/25 15:00 IM Farkas, T 2255 - FM Kojima, S 2357 0-1
9/26 15:00 FM Kojima, S 2357 - FM Keresztes, R 2237 1-0
9/27 15:00 FM Sean, W 2338 - FM Kojima, S 2357 0-1
9/28 10:00 Vamos, V 2181 - FM Kojima, S 2357
9/28 15:00 FM Kojima, S 2357 - IM Sarosi, Z 2265


夕飯は久々にSean と2人でトルティーヤを。彼は多少落ち込んでいるようでしたが、ノームチャンスを潰したばかりの私に対して、どこが自分の欠点なのかと素直に聞いてくるあたり、タフさとチェスへの深い情熱が伺えます。10月のFirst Saturday では、彼はGM クラスに初挑戦するそうなので、互いに研究を晒して困ることはありません。ブダペストに戻ってから、彼とのトレーニングの機会を設けようと考えています。


こちらは今日、会場に運び込まれたAndras Miszaros 氏の新刊のようです。内容は初心者向けのタクティクスですが、なかなかよくまとまっています。今回参加しているMeszaros, Sarosi, Farkas は、ここまで3人とも勝ちなしと大変苦戦していますが、このようにハンガリーのチェス発展のために貢献できるということは、素晴らしいことでしょう。


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