2013/09/29

CAISSA 2013 September IM 8th and 9th rounds - Good Ending -


9月のCAISSA 最終日は、午前と午後で1日2試合をこなし、夜にはブダペストに帰ります。いつも行くトルティーヤハウスの隣は、朝から昼まで時間限定オープンのパン屋さん。こちらで朝食を購入し、8R のVamos 戦に向かいます。


朝食から戻ってきたところ、会場謙宿泊所であるCAISSA PANZIO の前で、なにやらたくさんの木の実が転がっているのを発見します。はて、これは...?と拾い上げてみると


日本のものとは少し形が違いますが、これは栗でしょう。(見てわかると思いますが、左が殻で右が実です。) ちょうど1年前、イスタンブールでも多くの焼き栗屋台を見かけましたが、ハンガリーでも秋は栗の季節なのでしょうかね。こんな朝の発見があるのであれば、もう少し普段も早起きしてみるべきだったかもしれません。(いつもは起きやしないw)

Vamos, V (HUN, 2187) - Kojima, S (FM, JPN, 2357)
CAISSA 2013 September IM (8)

1. d4 d5 2. c4 c6 3. cxd5 cxd5 4. Nc3 Nf6 5. Bf4 Nc6 6. e3 Bf5



相手がExchange Variation を使うことは知っていましたが、敢えて勝ちに行きたいこのラウンド、十八番のSalv をチョイスしました。2100台のExchange を恐れているようでは、これから先、Salv をパートナーとして使うことはできません!

7. Qb3!?


昨年、ハンガリーで3回遭遇した流行のラインをVamos も指してくるとは。完全にビショップ交換からの消極的なラインを選択してくると思っていました。7. Bd3 Bxd3 8. Qxd3 e6 9. Nf3 Be7 10. O-O O-O= 黒は黒マスビショップを残して勝負です。

7... Na5 8. Bb5+!?



昨年夏にTo Nhat Minh も指してきたこのビショップチェックは、黒に大きな脅威をもたらさないでしょう。8. Qa4+ Bd7 9. Qc2 Rc8 10. Nf3 e6 11. Bd3 Bb4!? IM Kislik, E - FM Kojima, S / First Saturday 2012 November IM

8... Bd7 9. Bxd7+ Qxd7 10. Qb5 Nc6 11. Nf3 e6 12. Ne5!?


Vamos がピースをサクサク交換してドロー狙いなのはわかっていましたが、私はなんとか小さなチャンスを掴もうと画策します。

12... Nxe5 13. Bxe5 Ng4!?



試合前の準備でSlav Exchange のゲームをいくつか並べ、その中でウクライナのGM Stanislav Savchenko が、非常に似た形でこの手を指していたことを覚えていました。黒はe5 のビショップを追い返してf8 のビショップをフリーにし、ナイトは様子を見ながら、Ng4-Nh6-Nf5 と組み替えることも頭に置いておきます。

14. Bg3 Rc8 15. Qxd7+ Kxd7


白はRc8-Rc6 と指される前にクイーンを交換しておきますが、d7 の位置のキングは、黒にとって決して悪くないでしょう。もしa7-a6 と突いている形であれば、Nc3-Na4-Nb6 が厄介であるため、この手を挟まずにクイーンを交換したことは、黒にとって成功のポイントでもあります。(クイーンを交換しつつも、a7-a6 から出来たb6 のマスを利用するというアイディアは、インドのIM Lahiri とのゲームから学びました。)

16. Kd2 Bb4 17. Rac1 h5!?



これもSavchenko のアイディアですが、このポジションではさほど有効に働かないことは承知していました。それでも、何かしらアクションを起こさなければチャンスは作れないでしょう。17... Nf6 18. f3 Rc4 19. a3 Be7 20. Be5!=

18. h4?!


こうしたイマイチな応手を期待しての(実際は、まさか指してくるとは思いませんでしたが...)、18. h4 でした。黒マスビショップしか残っていないポジションで、黒マスに積極的にポーンを置くのは、あまり感心できる手ではありません。18. f3! Nh6 19. e4 dxe4 20. fxe4 f5!? 21. Kd3 Rhf8 黒は多少形を崩しますが、勝負にいくならばこうでしょう。

18... Nh6!


当然と言えば当然の一手! h4 のポーンを将来的なターゲットにすべく、今こそナイトを組み替えるときです。

19. a3 Be7 20. Nb5?!



実は試合中、この手を見て19... Be7 はミスだったのではないかと少しだけ考えました。しかし、ポジションを進めてみて、すぐにそれは杞憂に終わります。20. Bf4 Nf5 21. g3 Rc4 22. Kd3 Rhc8 23. f3 b5 これならば、黒が主導権を握ったままゲームは続くでしょう。

20... a6 21. Na7??


この思い切ったナイトの飛び込みが生きれば良かったのですが... 私も彼も、最初はこれで白の最悪ドローはあると勘違いしていました。

21... Rxc1 22. Rxc1 Bd8!-+



私も直前まで見落としていましたが、c7 をビショップで守れるマスは、d6 だけではありませんでした! 22... Bd6? 23. Bxd6 Kxd6 24. Nc8+ Kd7 25. Nb6+ Kd6 26. g3+/= (26. Nc8+= ならば、パペチュアルチェックでドロー))

23. Rc8


23. Nc8 Nf5 24. Bf4 Ba5+ 25.b4 Rxc8 26. Rxc8 Kxc8 27. bxa5 Nxh4 こちらのエンドゲームも、白にとって絶望的です。

23... Ba5+! 24. b4 Rxc8 25. Nxc8 Bc7! 26. Na7 Bxg3 27. fxg3 Kc7 28. b5 Nf5 29. a4 Nd6 0-1



哀れa7 に飛び込んだナイトは、そこで何もできずに力尽きたのでした。こうした勝ち方はラッキーでしたが、なんにせよこれでハンガリーで自身初の同大会4連勝!(大会をまたいでであれば、これまでも経験があります。) ノームのチャンスが消えたことで、逆に肩の力が抜けたのかもしれません。次のトーナメントからは、あまりノームのことを考えずにプレーしてみるつもりです。


午前の試合を終えて5階に上がると、そこではSean とGM Sax がコンピュータを使った研究を行っているところでした。かつてハンガリーを世界一に導いた名プレーヤーのレッスンは、私も機会があれば受けてみたいですね。

さて、通常通りの時間帯、午後3時からは逆転優勝と更なる記録更新をかけ、最終戦に臨みます。最後の相手は、ここまで1勝1敗1ドローのIM Sarosi です。

Kojima, S (FM, JPN, 2357) - Sarosi, Z (IM, HUN, 2257)
CAISSA 2013 September IM (9)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 d5 4. d4 Be7 5. Bf4 O-O 6. e3 c6 7. h3 Nbd7 8. Qc2



久々のQueen's Gambit Declined Bf4 ラインになりました。このポジションでは、8. c5 b6 9. b4 a5 10. a3 Ba6 11. Bxa6 Rxa6 12. b5 cxb5 13. c6 Qc8 14. c7 b4 15. Nb5 a4 というラインも調べていましたが、昨年の夏に成功した8. Qc2 を再び試してみることにします。

8... b6 9. Rd1


9. cxd5 exd5 10. Bd3+/- ここは早めにセンターのテンションを解放したうえで、積極的に組むのがベストとのコンピュータの評価。確かにこちらのほうがシンプルでした。

9... Bb7 10. a3 Rc8 11. Be2 a5 12. O-O Re8 13. cxd5



今度はここでは開くのがベストかやや怪しく、13. e4! dxe4 14. Nxe4 Nxe4 15. Qxe4 Nf6 16. Qc2 ならば、すでに黒マスビショップがポーンの外に出ているSemi-Slav Meran のようで、白としては満足な流れでしょう。この辺りがぱっとわからないのは、まだ私もQGD の理解が浅いということですかね...

13... exd5 14. Bd3 g6 15. Rc1 Nf8 16. Rfd1 Ne6 17. Bh2 b5 18. Ne5 Nd7 19. Nf3 Nf6 20. Qe2


この辺りは、ゆっくりと理想的なポジションを模索して細かくピースを動かします。

20... Bf8 21. a4?


あとで振り返ってみれば、このポーン突きから仕掛けるのはおかしかったのですが、代わりにどのようなプランがベストなのかよくわかりません。

21... b4 22. Nb1 Ne4?!



コンピュータの評価を見て目を丸くしました。ここは黒が多少良くなる変化があります。22... Nd7! 23. Nbd2 c5! 24. dxc5 Nexc5 25. Bb5 Bg7=/+ こうなると、21. a4 から仕掛けたプランが完全に失敗であることがわかります。

23. Nbd2 Nxd2 24. Rxd2 f6 25. Rdc2 Qb6 26. Qd1 c5 27. Bb5 Red8 28. dxc5


ここは28. b3 で待つ手もあったようですが、いずにせよ白はd4 のアウトポストと、d5 の将来的なターゲットを得たことで満足します。

28... Bxc5 29. Qe2 Kg7 30. Bg3 Kf7 31. Rd1 Kg7 32. Rdc1 Kf7 33. Nd2!



勝負にいくナイトのマヌーバリングは正しい判断でしょう! a3-a4 の最初のコンセプトである、a5 のポーンをターゲットにするプランが現実味を帯びてきました。

33... Be7 34. Nb3 Rxc2 35. Rxc2 Rc8 36. Bd7?!


この手ではアドバンテージを得られないことはわかっていたのですが、どうしても正解がわかりませんでした。36. Rxc8 Bxc8 37. Qd3! Nc5 (自然に見えるビショップ戻りには、驚きの応手がありました。37... Bb7? 38. e4! dxe4 39. Qd7! Ng7 40. Bc4+ Kf8 41. Nxa5 Qxa5 42. Bd6+- 全く見えません。) 38. Qd4+/= 確かにこうなれば、白はd4 のマスをしっかり抑えて、やや優勢で試合を続けられそうです。

36... Rxc2 37. Qxc2 Nc5! 38. Nxc5 Bxc5



ナイトまで捌いてしまうと、黒の問題はさほど気にならなくなります。(a5 のポーンの弱さなど) ほぼイコールに近そうですが、それでも試合は当然続けます。

39. Qe2 Ke7 40. Bb5 Kf7 41. Qg4 Bc6 42. Qh4 Kg7 43. Bxc6 Qxc6 44. Qf4


シンプルな44. b3 よりも、b8-h2 のダイアゴナルを先に抑えてしまうことのほうが重要に思ってこの手を指したのですが、次の黒の当然の一手を過小評価していました。

44... b3!



Oops! a4 のポーンを弱くするだけでなく、Bc5-Bb4 からa5 を守り、さらにはBb4-Bc3 という危険なスレットまで作れる可能性を含んでいます。こうなっては仕方がないので、パペチュアルによるFight for a draw にプランを切り替えます。

45. h4 h5 46. Qb8 Bb4 47. Bf4 Qd7 48. Qb6 1/2-1/2


ここでドローで合意しました。結局、連勝は4でストップ。なかなかマーくんのように、記録を更新し続けるのは簡単ではありません。このドローで今大会の通算成績は4勝2敗3ドローとなり、今日のRudakov とSean の試合結果を待って、最終順位が決まります。

9/21 15:30 FM Kojima, S 2357 - FM Lyell, M 2220 0-1
9/22 16:30 IM Meszaros, A 2273 - FM Kojima, S 2357 1/2-1/2
9/23 15:00 FM Kojima, S 2357 - Bird, A 2203 1/2-1/2
9/24 15:00 FM Kojima, S 2357 - Rudakov, A 2209 0-1
9/25 15:00 IM Farkas, T 2255 - FM Kojima, S 2357 0-1
9/26 15:00 FM Kojima, S 2357 - FM Keresztes, R 2237 1-0
9/27 15:00 FM Sean, W 2338 - FM Kojima, S 2357 0-1
9/28 10:00 Vamos, V 2181 - FM Kojima, S 2357 0-1
9/28 15:00 FM Kojima, S 2357 - IM Sarosi, Z 2265 1/2-1/2


アンダンテに戻って10分後、お寿司の差し入れが到着。なんという間の良い男(笑) 奥山さん、いつもありがとうございます!

0 件のコメント:

コメントを投稿

Copyright © 2011 Shinya Kojima All rights reserved.