2013/10/26

CAISSA 2013 October IM 8th round - An Incorrect Sacrifice -


最近、ケチケメートの町中ではこの子たちをよく見かけます。

10月のCAISSA もいよいよ終わりが近づいてきました。9月に落とした分のレイティングは10月前半のFS でほぼ取り戻しましたが、さらなるレイティングプラスを求めるためには、CAISSA 最後の2戦の結果が大切です。この日の8R は、3連勝中のSean との5度目の対戦となります。

Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
CAISSA 2013 October IM (8)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. Bd3!?



h4-h5 を挟まない変化は、多少珍しいですがあり得ます。メインと比べて白のメリットは、黒がキャスリングした後のg2-g4-g5 が強力になったり、h5 のポーンがエンドゲームで弱点にならないことが挙げられそうです。一方で、黒からh6-h5 と突ける可能性が残っているので、g4 のマスが弱いとも考えられるでしょう。

8... Bxd3 9. Qxd3 e6 10. Bd2 Ngf6 11. O-O-O Be7 12. Kb1 Qb6 13. Rhe1 c5!?


h4-h5 を突いていないことを除けば、2週間前のSean とのゲームと流れは同じでしたが、ここで私が新しいアイディアを投入します。前回の対戦で彼が採用した、Ng3-Nf5-Nxh6 というサクリファイスを警戒し、キャスリングをさらに遅らせて先にセンターを崩しにいきます。

14. d5!?



このようなポーンサクリファイスは他のラインでは見たことがありますが、このタイミングで成立するかは判断が難しいでしょう。黒は形を崩されないために、このポーンを取る一手です。

14... Nxd5 15. c4 N5f6 16. Bf4 O-O!


どちら側にもキャスリングできるポジションですが、b8-h2 のダイアゴナルを抑えられているクイーンサイドより、キングサイドにキャスリングすべきでしょう。

17. Nf5 Rfe8 18. Nxh6+?



黒はセンターへの反撃を十分に作ったうえでキャスリングを済ませているため、このタイミングでのサクリファイスは不発に終わるでしょう。最近のゲームをチェックする限り、Sean はとにかくよく駒を捨てており、試合後に私は、ノームの獲得とさらに強くなることを目指すならば、もっとソリッドなスタイルも学ばなければいけないと彼にアドバイスしています。18. Nxe7+! Rxe7 19. Qc2 Ree8 このような大人しい展開を白は選ぶべきで、働きの良い黒マスビショップの力で1ポーンの代償を求めるのがベストです。

18... gxh6 19. Bxh6 Rad8!?


19... Ng4! 20. Qe4 Ndf6-+ という変化がコンピュータの指摘でしたが、私はまだ使えていないピースをゲームに参加させる手が、最も自然だと常々考えています。

20. Qd2 Ne5?!



ところが、ここから不正確なディフェンスに走り始めました。20... Ng4! 21. Bg5 Ndf6-+ がやはり正しく、白はピースの代償をどこに求めるか難しくなります。私はNd7-Ne5-Ng6 でgファイルに蓋をするのが良いディフェンスだと考えていましたが、h4-h5 に対する読みが不十分でした。

21. Qg5+ Ng6 22. h5?!


指された直後は、なるほどルーク交換を挟まずに突くのかと思いましたが、今度はSean の不正確な一手でした。22. Rxd8 Qxd8! 23. h5 Qd3+ 24. Ka1 Nxh5! (20... Ne5 を指す前には、24... Ne4? と指すつもりでしたが、クイーンをg4 ではなく、c1 の方向へ引かれると困ったことになります。) 25. Qxh5 Qxc4=/+ これで黒はポーンアップで優勢をキープできていますが、いうまでもなくピースを捨て返す理由がありません!

22... Ne4?



これで余裕勝ちだろうと甘く見た試合中の私にドロップキック。22... Rxd1+! 23. Rxd1 Ne4 24. Qc1 Bf6-+ ならば、完全に攻守がが逆転し、ピースアップの黒が勝勢であることは明らかでした。上記の変化のように、d8 でルークを交換する変化はQb6-Qd8-Qd3 というマヌーバリングが可能になるため、黒にとってありがたいと思っていたのが大きな間違いでした。

23. Rxd8! Nc3+?!


なかなか正確な手がわかりません。23... Rxd8 24. Qe3 (24. Qc1? Bf6 25. hxg6 Nc3+ 26. Kc2 Nxa2 27. Qa1 Nb4+ 28. Kb1 Nd3-+) 24... Bf6 25. Qb3 Qxb3 26. axb3 Kh7 27. hxg6+ Kxh6 28. Rxe4 Kxg6=/+ これで黒はマテリアルイコールながらやや優勢です。しかし、ピースを貰った直後のことを思い返せば、おかしなゲーム展開にしています。

24. Ka1?



試合中、この手は当然だろうと両者ともに考えていました。しかし、これが白の決定的なミスで、ここから黒は正確に指し続けて勝勢まで持っていけます。24. Kc2! (人間の感覚ではこのようにキングが上がる手は難しいですが、本譜の流れを見ればこうするしかありえませんでした。) 24... Rxd8 25. Qe3 Nxa2 26. hxg6 Nb4+ 27. Kb1 Qa6 28. gxf7+ Kxf7 29. Ne5+ Ke8 30. Qa3 こうなれば勝負はどちらに転ぶか分かりません。

24... Rxd8 25. Qc1


23... Nc3+ を指してこのポジションをイメージした段階では、どちらかのナイトを諦めて形勢はアンクリアーだろうと読んでいました。しかし、ちょっと待てちょっと待てと私の頭で何者かが囁き、丁寧に読みを進める中で、勝ちのタクティクスを発見することに成功しました。

25... Na4!



自分の読みに落ち度がないことを祈りつつ、この手をチョイスします。c1 に退いたクイーンは満足にb2 を守っているようにも見えますが...

26. Qc2


26. hxg6 Bf6 27. gxf7+ Kxf7 28. Re2 (28. Ne5+ Bxe5 29. Rxe5 Rd1!-+) 28... Nxb2! 29. Rxb2 Qxb2+ 30. Qxb2 Rd1+ 31. Bc1 Rxc1#


Analysis Diagram

このポジションが見えた瞬間、チェスとは複雑なものだと改めて実感しました。

26... Bf6 27. Bc1 Nf4!-+



まさかのピース生還で、黒の勝勢が明らかになりました。ここまで導くのにだいぶ持ち時間を削りましたが、後はキングの安全性に気を付けながら、丁寧に指していけば問題ないと自分に言い聞かせて試合を進めます。

28. Ne5


28. Qxa4 Nd3! があるのがこのポジションの大きなポイントで、黒は再び決定的なマテリアルアドバンテージを得ることになります。

28... Qb4! 29. Re4 Nxh5



29... Bxe5 30. Rxe5 Nd3 31. a3 Qb6 32. Rg5+ Kh8-+ でも勝ちになりそうですが、b2 へのアタックとディフェンスを考慮し、ビショップは盤上に残しておくことにしました。

30. a3 Qa5 31. Ng4 Bg7


31... Bxb2+ 32. Bxb2 Rd2-+ ここは読み落としですが、大きな問題はないでしょう。

32. Nh6+ Kf8 33. g4 Nxb2!



これで白キング前にディフェンスを完全崩壊させ、ゲームオーバーです。

34. Ka2


34. Bxb2 Qxa3+ 35. Kb1 Rd1+!-+

34... Nd3 35. Bd2 Nb4+ 0-1



試合後には、Tamas にSean は一体どうしたのかと聞かれました。確かに、彼は今大会ですでに5敗、10月だけで9敗を喫しています。9月のFS, CAISSA の優勝者も、泥沼のスランプから抜け出すのは簡単ではないようです。

一方で私はIM Farkas から以来となる、ハンガリーでの同一カード4連勝となりました! 2300台からこの記録は自身初となります。私であれば、GM が相手であっても同じプレーヤーに連敗は嫌な気分になりますが、(フランスのGM Mathiew Cornette に連敗中です。) Sean はどこ吹く風といった具合で、来月ブダペストで一緒に誕生日を祝おうと約束しています。インドネシアの悩める天才児も、来月でようやく16歳を迎えます。

10/19 16:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Farkas, T (IM, SRB, 2257) 1/2-1/2
10/20 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - FM Lyell, M (FM, ENG, 2259) 1-0
10/21 09:00 Meszaros, A (IM, HUN, 2299) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/21 15:00 Erdely, T (IM, HUN, 2144) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/22 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Hajnal, Z (IM, HUN 2346) 1/2-1/2
10/23 15:00 Vamos, V (HUN, 2175) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/24 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Minko, V (FM, RUS, 2312) 1/2-1/2
10/25 15:00 Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/26 15:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sarosi, Z (IM, HUN, 2272)

+4 Minko
+3 Kojima
+2 Hajnal, Lyell
+-0Sarosi
-1 Vamos, Meszaros,
-2 Farkas
-3 Erdely,
-4 Sean

昨日のVamos - Minko は、Minko が余裕の勝利。予想できた結果とはいえ、Vamos にはもう少し意地を見せてほしかったです。Minko は今日、驚きのダブルヘッダーで、Hajnal, Lyell を迎え撃ちます。この記事が更新される頃には終わっているであろう、午前中のHajnal 戦はあっさりドローにして、Mark との勝負にノームの行方を託すと思うのですが、どうなるでしょうか...


この時期、ハロウィン飾りとクリスマス飾りが両方並ぶ不思議な光景が見られます。こちらの花屋はクリスマス寄りのようですね。オレンジのリース、ちょっと欲しいなぁ...


中央広場には、このようなチェスボードの描かれたテーブルが並んでいます。昨日は日中、23度と結構暖かかったのですが、それでも外で指してる人は見当たりませんでした。昨年の夏には何人か見かけたんですけどね。

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