2013/10/08

FS 2013 October GM 3rd round - Long Term Compensation -


Photo by Iwabuchi

ハンガリーにきて11ヶ月目、最もレイティングの高い相手との対戦の日を迎えました。イングランドから来たGM Gordon Stephen は、事前の情報によれば若くてチェスが強く、イケメンで子供の指導にも熱心とのこと。とりあえず勝てているのは若さだけですが、盤上でそう簡単に屈するわけにはいきません。ゲームは予想よりも非常に難解なポジションを早々に迎えることになりました。

Gordon, S (GM, ENG, 2526) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
First Saturday 2013 October GM (3)

1. c4 c6 2. Nf3 d5 3. e3 Nf6 4. Nc3 g6 5. d4 Bg7 6. Be2 O-O 7. O-O a6 8. Qb3!?



Slav では、多くの変化でポピュラーなアイディアです。b7 とd5 をアタックしておき、d1 をルークのために空けておきます。様子を見てQb3-Qc2 と退き、e3-e4 と突き直すこともあるでしょう。

8... e6 9. Bd2 Nbd7 10. Rac1 Re8


実戦では10... Ne4 と飛び込む手がありましたが、私はじっくりとe6-e5 からのセンターブレイクのチャンスを待つことにします。

11. Rfd1 Qe7 12. Ne5!?



12. Be1 dxc4! 13. Qxc4 e5 14. Qb3 exd4 15. Nxd4 Rb8!?= このようにポーンを突ければ、黒は最大の問題である白マスビショップの利きを開くことができます。本譜のようにe5 のマスを抑えれば、黒はe6-e5 を突けませんが、ピースを捌けるのは多少黒にとってありがたいでしょう。

12... Nxe5 13. dxe5 Nd7 14. f4 f6!


ここはダブルポーンを持たせておくよりも、黒マスビショップのダイアゴナルを開き、d6 のマスのコントロールを取り返すほうが重要です。

15. cxd5!?


私は15. exf6 と取る手しかほとんど考えていなかったので、この手には驚かされました。黒がeポーンで取り返した場合、e3 のポーンが弱くなるだけで、白には何もメリットがないと考えていました。ここでポーンの交換をするということは、すでに白はピースのサクリファイスを決断しているということです!

15... exd5 16. Nxd5!?



こうなったら黒もこれを受けるしかありません。クイーンサイドのピースの展開は遅れていますが、これは満足に受けきれるとこの時点では考えていました。

16... cxd5 17. Bb4! Qf7!


次のBe2-Bf3 に備え、白マスビショップをe6 に置けるように、クイーンはこのマスしかないでしょう。

18. Bf3


18. Rc7!? fxe5 19. Rxd5 これでもピースの代償があるというのがコンピュータの評価です。確かに、クイーンサイドが全く動けないうえにb7 がアタックされているのであれば、白は十分に捨てたナイトの分を補えそうです。

18... Nf8 19. Bd6 fxe5



19... Be6 20. Rc7 Nd7 21. Bxd5 Bxd5 22. Rxd5 と指すのではないかというのが、Gordon の局後の指摘ですが、本譜のようにクイーンが逃げる変化でも問題はないでしょう。

20. Rc7 Qf5!


ここはクイーンが逃げるマスを慎重に考えました。20... Qf6 21. Bxe5 Rxe5 22. fxe5 Qxe5 23. Rxd5 Qe6 24. Bg4!+- エクスチェンジを返す変化は全然だめです。

21. Bxd5+ Kh8



互いに慎重に時間を使ってベストムーブを探り、このポジションに到達しました。この時点で私はなんとか白のアタックを受けきり、ピースの代償は不十分だと考えていましたが、まだまだ局面は難解です。

22. e4! Qxf4?


直感的に、さらなるポーンサクリファイスを受け入れてfファイルを開くのは、黒にとって危険そうに見えます。私もそう考えましたが、残り時間が10分近くになるまで読みを続け、これを取る決断をしました。しかし、やはりこれが負け一直線のミスで、黒はクイーンをよけるべきでした。22... Qh5! (第一感だったこの手を切り捨てたことは、このゲーム最大の後悔です。) 23. Rf1! Ne6 24. Rxg7!! Nxg7 25. Bxe5


Analysis Diagram

黒はさらにエクスチェンジを捨て、ルーク損になっても十分戦えるというのが、コンピュータの恐るべき評価です。確かにこうしてポジションを考えてみると、黒のキングとナイトは全く身動きが取れず、クイーンサイドもこれからどうすれば良いのかよくわかりません。b7 が落ちれば、いよいよ白は面白くなってくるでしょう。

23. Rf1! Qh6


アンダンテへの帰路で、クイーンの避け場所を変えたらどうだったか考えていましたが、やはり白がかなり優勢になりそうです。23... Qg5 24. Rxg7! Kxg7 25. Rf7+ Kh6 26. Bxf8+ Rxf8 27. Rxf8+/- マテリアルはイコールですが、クイーンサイドのビショップとルークがいまだ動けない黒は、苦しい状況でしょう。

24. Rxg7!+-



彼にとっては、この程度のタクティクスは当たり前なのでしょうか。何もないと思っていたポーンサクリファイスは、白に決定的な攻撃のチャンスを与える布石でした。

24... Qxg7 25. Rf7 Qh6 26. Rxf8+!


まさかのダブルエクスチェンジサクリファイスから、ダブルビショップによるメイトの形! クイーンを捨ててダブルルーク vs クイーンにすればまだ戦えるチャンスがあると考えたのも、全くの勘違いでした。

24... Qxf8


26... Rxf8 27. Bxe5++-

27. Bxf8 Rxf8 28. Qc3 Re8 29. Qf3 1-0



久々のGM 戦勝利もあり得るかと思いましたが、たった一手の判断ミスに泣きました。これもまたチェスの難しいところです。しかし、ここまで3戦でGM クラスでも十分戦えるという感触は持てました。内容は悪くないので、残り7戦もしっかりと指し続けていこうと思います。次は3人目のGM Fogarasi が相手です。

10/05 14:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Seres, L (GM, HUN, 2449) 1/2-1/2
10/06 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sean, W (FM, INA, 2360) 1-0
10/07 16:00 Gordon, S (GM, ENG, 2526) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1-0
10/08 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Fogarasi, T (GM, HUN, 2401)
10/09 16:00 Westerberg, J (FM, SWE, 2404) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
10/10 Free Day
10/11 16:00 Seres, L (GM, HUN, 2449) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
10/12 16:00 Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
10/13 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Gordon, S (GM, ENG, 2526)
10/14 16:00 Fogarasi, T (GM, HUN, 2401) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
10/15 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Westerberg, J (FM, SWE, 2404)


昨夜は自分のふがいなさに腹が立ち、ハンガリーの高級アイス、MAGNUM をやけ食いするという愚行に(笑)


4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

お疲れさまです。相手のかたも負けるときはこんなふうに一撃でブッ倒れます・・気をつけよう暗い夜道とblunder

http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1587583

Shinya_Kojima さんのコメント...

このラインはかつて調べていたので、このゲームも見たことがあります。白はGordon だったんですね。

匿名 さんのコメント...

次戦の相手の方は2007年にCaruana と対戦しています。なんかまたスゴイ一撃を見てしまいました・・

http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1498215

Shinya_Kojima さんのコメント...

こちらはMega Database で解説を以前に読みました。
Caruana も、かつてハンガリーにGM ノームを獲得しに来ていたことに驚きですね。

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