2013/10/13

FS 2013 October GM 7th round - The End of Defence -


今朝は年に1回開催される、ブダペストのマラソン大会でした。こちらに住む友人が参加するとのことで、私も珍しく早起きし、スタート地点である英雄広場に足を運んでみました。しかしそこは、見渡す限りの人、人、人の山! 連絡手段がなければ、とても友人を探すことはできませんでした。アナウンスを聞いたところ、60か国以上から2000人以上(聞き間違いでなければ) の参加者が集まって走るそうです。彼らは本格的なマラソンランナーから、趣味の人、国旗を掲げて走る人まで老若男女様々でしたが、中にはお手製の衣装で登場する人もいます。


まさかのルービックキューブが登場(笑) ハンガリーの数学者、ルービックが考案し、世界的に有名になったゲームですが、こうした演出に使われると観客も大喜びです。他にも仮面の騎士や、クルトシュカラーチの着ぐるみも走っていました。


さて時間を昨日に戻します。ハンガリーでできた兄弟分、インドネシアのSean との対戦も、早くも4回目となります。もはや会うたびに Hi brother! と声をかける仲ですが、チェス盤を挟めば、当然ライバル関係に戻ります。前日にはWeterberg を倒し、浮上のきっかけを掴みたい彼ですが、そうは問屋が卸しません!

Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
First Saturday 2013 October GM (7)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. Nf3 Nd7 8. h5 Bh7 9. Bd3 Bxd3 10. Qxd3 e6 11. Bd2 Ngf6 12. O-O-O Be7 13. Kb1 Qb6 14. Rhe1 O-O 15. Nf5 Bb4 16. Nxh6+!?



このピースサクリファイスをノータイムで指してきた時点で、完全に彼のプリパレーション通りに進んできたことを悟りました。試合後に、この手は今年、Karjakin が初めて実戦投入した手だと教えてもらっています。あまり調べていなかったとは言え、私もCaro-Kann Classical は、ここ2年半で1度も負けのない十八番中の十八番ですので、そう簡単に崩れるわけにはいきません。

16... gxh6 17. c3 Ba3 18. Bc1


白は1テンポを使っても、キング前を弱めずにb2 へのメイティングアタックに対処しました。おそらくここがゲームのクリティカルポジションの1つで、白のキングサイドアタックにどう対応するかは、非常に難しいところだと思います。

18... Kh8?



私はポーンとエクスチェンジを返すつもりで、キングを危険だと判断したgファイルから、まずは寄せることにしました。しかし、このディフェンスはすでに失敗で、黒はもう少し慎重にマテリアルをキープすべきでした。18... Rfe8 19. g4 Nh7 20. c4 Bf8 21. g5 hxg5 22. Nxg5 Nxg5 23. Bxg5 Kh8 Karjakin, S - Mamedyarov, S / Renova FIDE GP / 2013 / この形の長期的なピースの代償は非常に評価が難しいですが、ひとまず黒からはアタックが遅い以上、白のイニシアチブは持続しそうです。

19. Ka1! Be7 20. Bxh6 Nd5


黒マスビショップを消せば、黒マスが多少弱くなるので、このd5 のナイトは活躍するだろうというのが私の読みでしたが、これは勘違いだったと言わざるをえません。

21. g4?!



なんとなくですが、Sean ならば、駒を取るよりアタックを優先すると考えていました! しかし、ここは駒を返してもらったうえでも、十分に白の攻めは続きます。21. Bxf8! Rxf8 22. c4 N5f6 (22... Nb4?! 23. Qd2 Kh7 24. a3+- このようにb4 にナイトが跳ぶアイディアが働かないのであれば、Nf6-Nd5 は良くないアイディアだったと判断できます。) 23. Ng5!+- やはり白はナイトを追い返し、攻めの態勢を作り直すことができます。ナイトをf6 に退かざるをえないのであれば、g5 を守るつもりでe7 に退いたビショップも、意味がなくなってしまいます。

21... Rg8 22. g5 Bf8?!


危険な黒マスビショップは消しておくべきだと判断しましたが、これは黒のキングのディフェンスを弱める結果になってしまいます。22... Qa6!? 23. Qc2 Qc4 がベターで、多少白のキングにも脅威を見せておくことができます。

23. Bxf8 Raxf8 24. Qd2



24. c4! Nb4 25. Qc3 Kh7 26. a3+- 上記のラインでも出たように、b4 に跳んだナイトが働かないというのは、私たち2人にとっての大きな見落としだったでしょう。

24... Qc7 25. c4?


今度はc3-c4 を突くタイミングを完全に間違えています! 私から試合後に指摘したのは、25. Re4! Rg7 26. c4 Ne7 27. Qc3+/- と進める変化で、一度f4 のマスを抑えてからでも、c3-c4 は遅くありません。

25... Qf4!



キングサイドの猛攻を止めるための、最も重要なディフェンスのアイディアです。ここでナイトの交換ができたことは、黒にとっての大きなプラスになります。

26. cxd5 Qxf3 27. g6!?


試合中、私が読んでいたのは27. dxe6 fxe6 28. Rxe6 Qxf2 29. Rh6+ (29. Qa5!?) 29... Kg7 30. Rg6+ Kh8 31. Rh6+= というドローの変化です。もちろん、白はパペチュアルを避けて勝負にいくのもありでしょうが、ナイトの交換前に比べ、チャンスが激減しているのは明らかです。

27... Rg7 28. dxe6



28. Qh6+ Kg8 29. gxf7+ Qxf7 30. dxe6 Qf6! (このオンリーディフェンスによって、白のポーンフォークが働かないことは、お互いに直前まで気づいていませんでした。) 31. Qe3 Nb6= コンピュータはイコール評価ですが、ゆっくりやれば黒が良いと彼は判断したのでしょう。私もこれは黒にチャンスがあると思っていました。

28... fxe6 29. Rg1?


この試合、初めて出た白の弱気な一手! 黒が一方的だったディフェンス側から脱出できるチャンスがやってきました。29. Rxe6 Rf6! ( 29... Qxf2 30. Qc1! Qf5 31. Rde1! 非常に難しい判断ですが、これならば白のイニシアチブは持続します!) 30. Re8+ Rf8 31. Qh6+ (31. Re6 =) 31... Kg8 32. Rde1 Qxf2= ならば、まだ結果はわからないでしょう。

29... Rf6!=/+



黒はh5-h6 さえ止めてしまえば、ひとまずは怖いところはありません。ここからカンウタープレーの時間です。

30. Qa5 a6 31. Rdf1 Kg8! 32. Qd8+ Nf8 33. Rh1 Rf5!


白の2コネクテッドパスポーンは、ピースの代償の要であるため、これが落ちれば黒の優勢は明らかになります。

34. Qh4 Rf4 35. Qd8 Rd7 36. Qe8 Rfxd4-+



これでほぼ勝負は決しました。窮屈なディフェンスにしか使えていなかった黒のダブルルークは、ようやく活動の機会を得て白のキングにプレッシャーをかけます。

37. a3 Rd8 38. Qe7 R8d7 39. Qe8 Rd8 40. Qe7 R4d7 41. Qh4 Rd3!


40手まで到達させて持ち時間を増やした直後、決定的な一手を発見しました。a3 取りからルークを2段目に入れる狙いで、メイトスレットを作ります。

42. Qe7 R8d7 43. Qe8 Qf6! 0-1



a3 取りとb2 へのプレッシャー、クイーン強制交換を交えることでゲームセットです。怪しいゲームでしたが、なんとかこれを気合でねじ伏せ、再び1つ勝ち越しグループに戻ってきました!

Sean にはこれで3勝1ドローですが、決して彼は弱いプレーヤーではありません。8月のFirst Saturday では、初めてのノームを獲得しています。9月はFS, CAISSA それぞれで、1つ星が足りずにノームこそ逃していますが、 ともに単独優勝でした。当然、彼が日本に来れば、対抗できるプレーヤーはほぼいないでしょう。それでも、これだけ苦戦するのがGM Section です。今は彼にとって必要な試練の時間だと思いますので、ここを乗り切って強豪インドネシアのトップクラスにのし上がってほしいと思います。

10/05 14:30 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Seres, L (GM, HUN, 2449) 1/2-1/2
10/06 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Sean, W (FM, INA, 2360) 1-0
10/07 16:00 Gordon, S (GM, ENG, 2526) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1-0
10/08 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Fogarasi, T (GM, HUN, 2401) 1/2-1/2
10/09 16:00 Westerberg, J (FM, SWE, 2404) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/10 Free Day
10/11 16:00 Seres, L (GM, HUN, 2449) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 1/2-1/2
10/12 16:00 Sean, W (FM, INA, 2360) - Kojima, S (FM, JPN, 2344) 0-1
10/13 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Gordon, S (GM, ENG, 2526)
10/14 16:00 Fogarasi, T (GM, HUN, 2401) - Kojima, S (FM, JPN, 2344)
10/15 16:00 Kojima, S (FM, JPN, 2344) - Westerberg, J (FM, SWE, 2404)

FS 2013 October GM

残るは3戦で白が2回残っています。その大事な1回は、今大会のトーナメントリーダー、Gordon に次のラウンドで使います! 前半戦で唯一黒星をつけられた相手に、白でも負けるわけにはいきません。ここを乗り切れば、いよいよゴールが見えてきます。

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