2014/03/14

FIDE Candidate Tournament 2014 - The Road to Carlsen -


現在、名実ともに世界最強と言われる世界チャンピオン、Carlsen に挑戦するプレーヤーを決定すべく、Candidate Tournament がロシアのハンティマンシスクで始まっています。たった1つの挑戦者の椅子を争うのは世界トップの8名、レイティング順に、Aronian(アルメニア)、Kramnik(ロシア)、Topalov(ブルガリア)、Anand(インド)、Karjakin(ロシア)、Svidler(ロシア)、Mamedjarov(アゼルバイジャン)、Andreikin(ロシア) となっています。

今夜は2R が行われており、すでに4局ともに終わっています。Aronian - Mamedjarov、Svidler - Andreikin、Kramnik - Karjakin が白勝ち、Topalov - Anand はドローとなっています。ちなみに私は公式HP で、エンジンを入れずにゲームを見ています。

FIDE Candidate Tournament 2014 Live Games

今日、決着がつく試合が多いのは、様子見かと思われた昨日の初戦で、Anand が世界ランキング2位のAronian を破ったことが、他のプレーヤーの刺激になっているためではないでしょうか。最終戦でVan Wely に敗れたものの、Tata Steel で鬼のような強さを見せたAronian に初戦から土がついたことは、多くのチェスファンを驚かせたでしょう。もう一度挑戦者として、Carlsen の前に立とうというAnand の決意が見えたようなゲームだったと思います。

Anand, V (GM, IND, 2770) - Aronian, L (GM, ARM, 2830)
Candidates 2014 (1)

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 O-O 8. h3 Bb7 9. d3 d5 10. exd5 Nxd5 11. Nbd2 Qd7 12. Nxe5 Nxe5 13. Rxe5 Nf6 14. Re1 Rae8 15. Nf3 Bd6 16. Be3 Re7 17. d4 Rfe8 18. c3 h6 19. Ne5!?



Anti-Marshall h3 で始まったゲームは、よくある流れで白が1ポーンアップしましたが、Anand はここでポーンを返す決断をします。狙いは言わずもがな、白がダブルビショップを持つ有利なエンドゲームに持ち込むことです。

19... Bxe5 20. dxe5 Rxe5 21. Qxd7 Nxd7 22. Red1 Nf6 23. c4!


私が昨夜ライブをチェックした時、まさにこのポジションでした。白にチャンスがあるのは明らかですが、黒はAronian ですので、そう簡単ではないだろう... そうした私の予想を覆し、Anand は丁寧なプレーでAronian に何もさせませんでした。

23... c6 24. Rac1 R5e7 25. a4!



ブラジルのGM Milos の解説では、この時点ですでに黒が負けなのではないかとのことです。実際に進めてみてどういった変化、黒の粘りがあるかは、皆で検討してみたいポジションですね。

25... bxc4 26. Bxc4 Nd5 27. Bc5 Re4 28. f3 R4e5 29. Kf2 Bc8


29... Ne3?! 30. Bxf7+! Kxf7 31. Rd7+ Kg8 32. Rxb7+- でも白勝ちになりそうです。

30. Bf1 R5e6 31. Rd3 Nf4 32. Rb3 Rd8 33. Be3 Nd5 34. Bd2 Nf6 35. Ba5+-



この辺りのビショップの組換え方は、非常に勉強になります。当然ながら白はダブルビショップを残し、a6, c6 にプレッシャーをかけてチャンスを広げます。

35... Rde8 36. Rb6 Re5 37. Bc3 Nd5 38. Bxe5 Nxb6 39. Bd4 Nxa4 40. Rxc6 Rd8 41. Rc4 Bd7 42. b3 Bb5 43. Rb4 Nb2 44. Bxb5 axb5 45. Ke3 Re8+ 46. Kd2 Rd8 47. Kc3 1-0


最後はきれいにナイトが捕まり、ゲームセットです。明日以降も好カードが続きますので、またライブから目が離せない生活に突入しそうですね。ちなみにChess News では、このゲームを解説している記事が2つ出ており、好手のポイントなどが少し違っていますので、そういった点を見比べて棋譜を並べてみるのも面白そうです。

Candidates Rd1: The Madras Tiger breaks Aronian

Providing Anand for Anand fans

3 件のコメント:

R.T さんのコメント...

17.d4- 18.c3 も何気ないけど、深いよね。

ぱっと見だと、黒からNd5とかで固められた時用の引き出しとして、Bc2-Qd3を作ってるのかな、と思ったけど。

19.Ne5の着想から考えると、違った見え方が出きた。
白の17~18手目が、作戦負けしないように引き出し(選択肢)を広げている、という点を踏まえつつ、それがどれほどか、という事。

というのも、単に19.Ne5が良い手、という注目の仕方だと「じゃあ何で18.Ne5じゃないの?」となってしまう。
後々白からc4をついたりしてるし、黒がh6指してる分だけ得してるんじゃないか?という誤解も生まれそう。

しかし、仮に18.Ne5 Bxe5 19.dxe5 Rxe5 20.Qxd7 Nxd7 21.Red1 だと、21...Nc5で黒は不満なくビショップペアを解消できてしまう。
そうすると、白のc3と、黒のh6では、やはり白に分があるように思える。実際に指されるかどうかは別として、ビショップペアを残す、という選択肢が有るから。

つまり、18.c3! 次に19.Ne5と指し、クイーン交換からツービショップによる有利な中盤戦を一つの狙いとして内包している。という言い方もできるのかなぁと。
思いつく限りだと、これを防ぐには、...Qf5とクイーンを避けて見るか、...Nd5とd-fileに蓋をする事。
...Nd5に対してBd2を想定しているのなら、やはりその際にc3と指している事はメリット。


ここまで来てようやく、ぱっと見のBc2-Qd3というアイディアではなくて「黒の...Nd5に対するPc3という形」そのものを自分で再評価出来た。

chessbaseの解説とかだと、18.c3に何も書いてないけど、自分にとっては普通な手ではない、と感じました。

R.T さんのコメント...

…すいません、誤解でした。18.Ne5~21...Nc5はダメだ、7th Rank支配されるから、21...Nf6しかない。

より純粋に、白だけを見るなら、18.c3 は白マス斜線を開ける(ビショップの斜線解放)、d4の補強の2つの意味合い。黒も見るなら、b1-h7斜線の妨害、及びa8-h1斜線への対抗…か?

当然、18手目には色々あるべきで、例えば18.a4と比較して、はっきり18.c3が勝る、と言ってるわけではないけれど、。

…頭痛く成ってきた。分かんないです。どうやったら実戦で辿り着けますか。(投げ逃げ)




Shinya_Kojima さんのコメント...

また長いコメントが来ましたね ( ̄▽ ̄)

c3-d4 という形は作っておいて損のないものですし、そこまで深く考えなくても良いのでは? Nf3-Ne5 も一つのアイディアとして抑えつつ、他のプランと比較して適切なタイミングを探すのだと思いますよ。

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