2015/03/15

The Highest Level Training in Japan on 12th March Vol.2


3月の羽生さんのトレーニング記事、第2弾です。この日のお昼は沖縄料理が休業、イタリアンが満席だったため、近くの焼肉へ。昼食の席での話題は、チェスがカペル、将棋が王将戦についてなどでしたが、共通の話題として、2020年のWMSG がありました。先日の記事で私も書きましたが、東京への誘致活動が本格的なり、さらには東京での実現となれば、日本の将棋界、チェス界にも大きな影響があるでしょうね。

さて、午後の試合は色を入れ替え、私が白番です。トレーニングが終わって振り返ってみれば、黒で久々に勝てたことで、リラックスしてゲームに臨めたと思えます。

Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Habu, Y (FM, JPN, 2398)
Training (2)

1. Nf3 Nf6 2. c4 e6 3. d4 b6 4. g3 Ba6 5. Qa4!?



まさかの羽生さんによる初のQueen's Indian でしたが、用意していたQa4 Variation で冷静に対処します。ハンガリーで指そうと研究だけはしていましたが、ようやく実戦の機会に恵まれました。しばらく定跡通りに進みます。

5... Bb7 6. Bg2 c5 7. dxc5 bxc5


c5 にピースを残す変化に対しては、7... Bxc5 8. O-O O-O 9. Nc3 Be7 10. Rd1 Na6 11. Bf4 Nc5 12. Qc2 Qc8 13. Rd4!? d5 14. Rc1+/= が良いのではないかと考えています。

8. O-O Be7 9. Nc3 O-O 10. Rd1 Qb6 11. Bf4 d6 12. Qb3!?



12. Rd2 Nc6! は黒が満足で、12. Rab1!? もあまり好きな形ではありません。そこでクイーンを早めにぶつけ、その後でルークをdファイルに重ねる作戦を取ります。

12... Rd8 13. Rd2 Nbd7 14. Rad1 Ne8 15. e4!?


ここは難しい判断ですが、2つのポーンでd5 のマスを抑え、d6 のポーンを固定してしまいます。悩むのはクイーン交換を許して良いのかどうかですが、私はOK だと考えました。もう少しゆっくり試合を進めるのであれば、15. Qc2 とクイーンを下げてから、e2-e4 を行うべきでしょう。

15... Qxb3 16. axb3 a6?!



私は試合中、e4-e5 からのブレイクが決まれば、白が良いエンドゲームになると思っていました。そこでそれを防ぐためのe6-e5 を羽生さんに提案しましたが、これには驚く返しがありました。16... e5 17. Bxe5!


Analysis Diagram

先まで読み切るのは難しいですが、このポーンは取ることができます! b7,e7 のビショップにダブルアタックがかかることを、試合でも検討でも見落としていました。17... Nxe5 18. Nxe5 dxe5 19. Rd7 Rxd7 20. Rxd7 Bf8 21. Rxb7 Nd6 22. Rc7 Rb8 23. Rxc5 Rxb3 24. Nd1 Rb4 25. Bf1 Nxe4 26. Rxe5+/=

17. e5!



ここは白からブレイクのチャンスです。私の考えでは、白のダブルポーンよりも、黒のc5 の孤立ポーンのほうが負担になります。

17... Nxe5 18. Nxe5


ここは少し時間をかけ、どちらのピースでナイトを取るか考えました。本譜は自然に見えますが、ビショップからもありえる手です。18. Bxe5!? dxe5 (18... g5!?) 19. Rd7! (19. Nxe5 Rxd2 20. Rxd2 Bxg2 21. Kxg2+/= これが私のイメージしていたポジションで、白がやや良いながら、これならば本譜でのようにビショップを残すが自然だと考えました。) 19... e4 20. Rxe7! (20. Ne1?! Bc6! 21. Rxe7? Rxd1 22. Nxd1 Kf8 23. Rxe8+ Rxe8=/+) 20... Rxd1+ 21. Nxd1 exf3 22. Rxb7 fxg2 23. Nc3+/-


Analysis Diagram

このポジションは、ルークの侵入している白が明らかに優勢です。Rd2-Rd7 のアイディアは、頭にありながらも、なかなか実行できませんでした。

18... Bxg2 19. Kxg2 dxe5 20. Bxe5?!



ここで難しいのは、ルーク交換のタイミングです。私は黒がルーク交換を避けながら戦える1つの変化が見えていながら、このタイミングでの交換に踏み込めませんでした。20. Rxd8 Rxd8 21. Rxd8 Bxd8 22. Be3!+/= この手を私は見落としていました。正直にe5 のポーンを取るよりも、c5 を取ってパスポーンを作ったほうが、白は勝つチャンスを作りやすいのは明らかです。

20... f6?


20... Rxd2! 21. Rxd2 Ra7! 羽生さんはこのアイディアを見つけられなかったのでしょう。b8 のマスを使えないのであれば、b7 からb3 をアタックするのが、黒の唯一可能な反撃でした。 22. Na4 Rb7 23. Rd3 f5=

21. Rxd8 Rxd8 22. Rxd8 Bxd8 23. Bb8!+-



これで黒にはポーンを守る方法がありません。後はゆっくりとピースのポジションを改善し、シンプルなエンドゲームを目指すだけです。

23... Ba5 24. Na4 Bb4 25. Ba7 Kf7 26. Bxc5 Bxc5 27. Nxc5


黒のナイトはここからアクティブな反撃を作るチャンスもなく、残りは時間の問題です。

27... Nc7 28. Kf3 Ke7 29. Ke4 Kd6 30. b4 Kc6 31. Nb3 Kd6 32. f4 h5 33. h3 g6 34. Nc5 Ke7 35. Kd4 Kd6 36. Ne4+ Ke7 37. g4 hxg4 38. hxg4 f5 39. Nf2 Kd6 40. g5 Ne8 41. Nd3 1-0



ルーク交換のタイミングだけは小さなミスがありましたが、他はほぼ完ぺきな指しまわしだったと思います。この日はラピッドの後でポジションの研究を軽めにし、最後に5/2 のブリッツで締めました。ハワイでしっかりと成果が出るかは分かりませんが、羽生さんに時間を割いていただいてトレーニングをし、そこで学んだことを無駄にしないような試合をしてこられればと思います。ハワイには、3日後の水曜日、夕方の便で向かいます。

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