2016/02/15

GM Arkadij Naiditsch Simultaneous Event Report


Photo by Hasegawa

建国記念の日である2/11、アゼルバイジャンのGM Arkadij Naiditsch をゲストに招き、東京大学の駒場キャンパスで同時対局イベントを開催してきました。Naiditsch の来日が突如決まり、告知からイベント当日までが2週間しかないという急なスケジュールでしたが、30名の同時対局の枠はすべて埋まりました。参加してくださった皆さん、ありがとうございました。


スタート時には、挨拶だけでなく同時対局のルール説明を行います。

当日は大きなトラブルもなく、予定通りの13時半からスタートすることができました。30面を快調に回っていたように見えたNaiditsch ですが、15手ほど進むと怪しげな形勢のボードも出てきます。私がこれは... と真っ先に思ったのは、田尻くんのゲームです。


Naiditsch, A - Tajiri, M
GM Arkadij Naiditsch Simultaneous Event
Position After 15. g4

白がg2-g4 と仕掛けたポジションですが、a1 のルークを使う準備ができていない段階では、少し時期尚早にも思えます。白はb6-b5 が気になるものの、15. 0-0-0 から、キングサイドで仕掛けるタイミングを計るのが良かったでしょう。

15... Ne5! 16. Qg2 hxg4 17. Bxe5 dxe5 18. h5 gxh5 19. Nd5 Rxd5!?


これはベストではないかもしれませんが、実戦的には白にとって嫌なエクスチェンジサクリファイスです。黒はc2 をクイーンで取るテンポを得て、センターに残った白キングを問題とします。

20. Bxd5 gxf3 21. Qxf3 Nxd5 22. exd5 Qxc2 23. Rg1 Qxb2 24. Rd1 Rc8 25. Rg3 Qb4+ 26. Kf1 Rc4 27. Qxh5 Qxa4 28. Kg1 Rh4 29. Qe2 Re4 30. Qh5 Rh4 31. Qe2 Re4 32. Qh5 Rh4 1/2-1/2



最後は3回同一局面ではゲームを終わらせましたが、32... Kf8 などと指してゲームを続ければ、黒には十分に勝つチャンスがあるでしょう。田尻くんとしては、GM からの貴重な白星を挙げる機会だったかもしれませんが、それはまた次回のお楽しみですね。

他にも得意のAlekhine Defence で安定した指しまわしを見せ、ルークとナイトとエンドゲームまで持っていった阿部くんと、2ポーンアップまで行ったものの、クイーンエンディングで惜しくも勝ちを逃した大塚さんの3人が、Naiditsch から1/2 ポイントを挙げました。他にも参加者側が優勢なボードがちらほらありましたが、残念ながら逆転を許し、最終的には黒星となりました。最終結果はNaiditsch の、27勝3ドローというスコアです。Nigel Short の同時対局でもそうでしたが、休憩なしで5時間かけて30面を指し、1つも負けを喫しないのが、2700 クラスのGM の実力です!


今回の会場は、駒場キャンパスのKomcee West 地下ホールを使わせていただきました。1階からはこのように、対局している様子を見下ろすことができます。


運営の羽生さんと私、そして会場に足を運んでくださった強豪たちは、終わった参加者の検討戦を手伝うこともあります。自分の試合でなくとも、羽生さんが検討に臨む姿勢とまなざしは真剣そのものですね。


静かで厳かだった同時対局会場とはうってかわり、打ち上げは和やかな雰囲気に包まれました。駒場の居酒屋には、Naiditsch 夫妻、参加者、見学者、運営のメンバーが集まり、25名を超える大所帯となりました。Naiditsch 夫妻には、日本の飲み会を楽しんでいただけたと思っています。今回の来日をきっかけに、彼らと日本のチェスメンバーの交流が今後も続いていくと良いですね。

今回のイベントで協力してくださった皆さん、急な頼みにもかかわらず快く引き受けてくださり、ありがとうございました。Naiditsch 来日のきっかけ作りから、イベント運営までを行ってくださったは羽生さんにも、深く感謝致します。また次回のイベントでも、よろしくお願い致します。

1 件のコメント:

宮村直佳(クイーンが消えたら、即リザイン) さんのコメント...

興味深く読ませていただきました。面白い記事でした。当日の盛況振りが、こちらに伝わってきます。同時にチェスが持つ国際性を改めて感じました。事前の予測通り、俺が行けるような場所ではないですね、ここは。迂闊に踏み込んだら、バラバラに砕け散っていました。危ない危ない。本当に行かなくて良かったです(笑)。小島さん(そろそろ「先生」と呼ぶべきか?)の熱意も凄いけど、羽生先生の情熱にも圧倒されます。天才のお二人、ますますの御活躍に期待しております。

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