2017/07/22

Japan Junior Chess Championship 2017 Tournament Report


この2日間、蒲田で開催されている全日本ジュニア選手権に足を運んできました。今年もジュニアは盛況で、アメリカ、カナダなどでプレーしている日本人プレーヤーの参加もあり、参加者は30人を超えています。初日の時点でリストトップ4のうちの3人、逢阪くん、大多和くん、中原くんが3連勝となり、勝負の2日目を迎えました。私が今日、会場に到着すると1B はこのようなポジションを迎えていました。


Otawa, Y - Nakahara, K
Position After ... Re8

1. d7?


白の大多和くんは持ち時間がほとんどなく、ここで正確な指し手を見失ってしまいます。とは言え、黒のRe8-Re2 の狙いはシンプルかつ強力で、どのように対処すれば良いかを短い時間で判断するのは至難の業です。1. a6! Qc6 2. Kf2!+-

1... Qxd7 2. bxc5 Re2!


白はdポーンを突き捨てることで、クイーンの利きをa8-h1 のダイアゴナルから逸らしつつ、d4 のナイトを浮かして勝ちだと思ったかもしれません。それに対しては、構わずe2 にルークを突入させる手が強力です。

3. Qxd4 Re1+!?



黒には2つの選択肢がありますが、ディフレクションでエクスチェンジを取る変化を選びました。このポジションでは、黒は望めばドローであることは分かっていたでしょう。3... Qh3 4. Qd8+ Kg7 5. Qd4+ Kg8 6. Qd8+ ならば、白にはg2 のメイトを防ぐ方法が、黒にはパペチュアルチェックを防ぐ方法がなく、両者ともドローにするしかないことは明らかです。しかし、4R までで1/2 ポイントリードしている大多和くんを捕まえるため、あえて勝負に出た中原くんの判断は称賛されるべきだと思います!

4. Kf2 Rxd1 5. Qxd7 Rxd7 6. Ke3!


私も見落としていた単純な手で、白はキングを前進させてパスポーンのサポートに向かいます。

6... Rd5?


ここでは、6... Kf8! 7. Nd6 Ke7 8. Kd4 ならば、まだ形勢不明だったでしょう。黒は白と違って多少の時間が残っていただけに、 惜しむべきミスでした。

7. a6!+-



大多和くんは持ち時間をぎりぎりまで使い、この手での勝ちを読み切りました。c5 を落としても、c4 のナイトがa5 を抑えていているうえ、Nc4-Nb6 という飛び込みで、プロモーションをサポートします。これでルークとポーンを交換できた白は、残ったナイトを丁寧に使ってエンドゲームを勝ち切り、5連勝となりました。

大多和くんは最終戦、1P差で追いかけてくる鈴木くんも下し、6連勝での優勝を決めました。ここ数年、全日本や海外大会で腕を磨き、名実ともに日本のジュニアトップクラスに上り詰めた大多和くんは、これで2年ぶり2回目のジュニア選手権優勝、そして初の単独優勝です。大多和くん、おめでとうございます!

昨年のジュニアチャンピオン、カナダの田中くんは大多和くんにのみ敗れて5/6。今年も安定した強さを見せてくれましたが、惜しくも連覇はならずです。(直前のWorld Open では、Open クラスでパフォーマンス2000以上を出したそうです。) 私も昨年秋に函館で対戦した、函館CC のホープ、渋谷くんも同じく5勝1敗で5/6。3位という好成績を残しました。大多和くんだけでなく、他の入賞した2人にも、お祝いの言葉を送りたいと思います。

毎年、ジュニアの大会は全日本に負けないドラマと熱気があり、観戦していてとても面白いと思っています。今年もジュニア選手権が終わり、これで私も一息つきたいところですが、明日は小学生選手権と、シニア選手権の最終日です。再び蒲田に足を運ぶつもりですので、参加者の皆さん、頑張ってきてください! (ジュニアの保護者の皆さんも、連日お疲れ様です!)

2017/07/18

Summer Open 2017 Day2 Tournament Report


サマーオープンの初戦で負けてしまった私は、2日目で巻き返しを図ります。この日の3試合はタフなエンドゲームが続きました。どれも勉強になりましたが、4R の東野さんとのゲームをご紹介します。


Higashino, T - Kojima, S
Summer Open 2017(4)
Position After 44... Rxe3

45. Kf2 Rc3 46. Re2


ここは白の作戦が分かれるところですが、東野さんはルークでポーンを取りあうのではなく、ルーク交換からのディフェンスを選びました。どちらでも白には十分なドローチャンスがあり。どちらが白にとって分かりやすいかは、判断の分かれるところです。46. Rd7+ (検討では46. Rd6 とすぐにb6 を当てる変化を考えましたが、チェックしてキングの位置をずらすほうが白にとっては分かりやすいでしょう。) 46... Ke8 47. Rd6 これでポーンを取りあえば、白はさほど困っていません。

46... a4 47. Re3 Rc2+ 48. Re2 Rc3 49. Re3 Rc1 50. Re1 Rxe1 51. Kxe1 Ke6



a4 のポーンは取られても白にパスポーンができるわけではないため、私はキングとポーンのテンポを計算し、これで黒が勝てるのではないかと判断しました。その結論は試合後も間違いないと思っていたのですが、コンピュータは一つだけ白にディフェンスがあると指摘します。

52. Ke2 Kf5 53. Ke3??


これが白のミスで、ドローを取るためには1手も間違えることはできません。53. Kf3 a3 (試合中、これで1テンポ使って白に手番を渡せば黒勝ちだと思っていました。) 54. Kf2 Ke4 (54... Kg4 55. Kg2 f5 56. Kf2 Kh3 57. Kf3 Kh2 58. Kf2 Kh1 59. Kf1= これは分かりやすいくドローなので、黒キングはクイーンサイドに向かいます。) 55. Ke2 f5 56. Kf2 Kd3 57. Kf3 Kc2 58. Ke2 Kb2 59. Kd2 Kxa2 60. Kc2 Ka1 61. Kc1 Ka2 62. Kc2= 黒はどこのポーンも動かすことができないため、ポーンが複数残っていても白はaファイルのパスポーン時のディフェンス、相手キングのaファイル閉じ込めアイディアが使えます。これは私と東野さんにとって完全な盲点でした。

53... Kg4 54. Kf2 axb3!



本譜ではここでポーンを交換するのがミソで、f6-f5 のテンポとあわせて白をツークツワンクに追い込むことができます。54... Kh3? 55. bxa4! f5 56. Kf3=

55. axb3 Kh3 56. f5


56. Kf3 f5 57. Kf2 Kh2 58. Kf3 Kg1-+ こうしてg1 まで潜り込めれば、g3 のポーンを取って黒の勝ちです。

56... gxf5 57. Kf3 Kh2 58. Kf2 f4! 59. gxf4 f5 0-1



ここまでくれば、あとは白のh4 のポーンを取って黒の勝ちです。キングがかなり前進でき、a4-a3f6-f5 のテンポもあれば、ポーンエンディングは黒勝ちだと思っていましたが、あのようなディフェンスがあるとは予想外でした。まだまだ勉強しなければいけないことはたくさんありますね。


この後のラウンドでは、山田くんに勝ち、南條くんにドローで、4.5/6 で3位タイフィニッシュとなりました。最終戦はかなり有利な中盤だっただけに、勝てなかったのは残念です。この結果で4勝2ドローの南條くんと、5勝1敗の馬場さんが5/6 でトップをシェアすることになりました。2人とも、おめでとうございます!

サマーオープン参加者と運営の皆さん、お疲れ様でした。今週は続いてジュニア、シニア選手権と小学生選手権が開催されます。私は1日中かはわかりませんが、会場に毎日顔は出すと思いますので、またそちらでお会いしましょう。私自身の次の大会は、来月のジャパンリーグになると思います。全日本に続くFIDE 公式戦も、もちろん楽しみです。

2017/07/16

Summer Open 2017 Day1 Tournament Report

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今日から2日間、蒲田で開催されているサマーオープンに参加しています。今日はどうも集中を欠き、初戦は必勝のルークエンディングで、ひどい勘違いをいくつもしてしまいました。


Kojima, S - Bruez Cyriaquo, V
Summer Open 2017(1)
Position After 38... Rxd7

39. Re2! g5


この手を読み落としており、少なからず動揺してしまいます。そのせいか、簡単な正解を見つけそびれてしまいました。

40. c6 Rf7 41. Kf2?



41. f6! Rxf6 42. Re7+- こうして7段目に侵入し、c7 を取ってしまえば簡単に勝ちでした。41... Kg8 42. Re6 でも、黒は何もできません。

41... Kg7 42. h4?! h5!


この手ももう少し読んでから42手目を指すべきでした。白はキングの位置が良くなり、ポーンを捌いた後は有利だと思っていたのですが...

43. Kf3 hxg4+ 44. Kxg4 f3!? 45. Rf2 gxh4 46. Kg5!?



ここはKg7-Kf6 を防ぐことが先決で、これでまだまだチャンスはあると感じていました。

46... Rf8! 47. Rxf3 Re8 48. Ra3 Re4??


eファイルからのカウンターに対しては、aファイルで対抗するのが私のプランでした。これには48... Rc8! とパッシヴにも見えるディフェンスが正解で、白は押しているようにも見えますが、c7 をアタックしたまま、黒のhポーンの前進とKg7-Kf6-Ke5 を防ぐことができません。本譜のようにc7 が落ちれば、白は楽に勝てるはずでした。

49. Ra7 h3 50. Rxc7+ Kg8 51. Rd7?



ここは本当に恥ずかしいテンポの数え間違いで、なぜ自分のcポーンのほうが早いと思ったのか、今振り返ってみてもわかりません。51. Rc8+! Kh7 52. Ra8 h2 53. Ra1 Re2 54. Kf6 Kg8 55. Rc1! Rc2 56. Rh1 Re2 57. b5!+- これで黒はツークツワンクとなり、白の勝ちです。黒はルークでeファイルのカットオフと、h2 のポーンのディフェンスを続けることができません。

51... h2= 52. c7 Rc4 53. Rd8+ Kh7 54. Rd7+


51手目の時点では、ここでプロモーションできると勘違いしていました。当然、黒にだけクイーンが残ります。

54... Kg8 55. Kg6 Rg4+ 56. Kf6 Rc4 57. Kg6 Rg4+ 58. Kf6 Rc4 59. Rd8+??



冷静であれば、59. Kg6 と指してドローでした。何をやっても良いと思ったのが間違いで、唯一の黒勝ちに跳び込みます。

59... Kh7 60. Rd7+ Kh6 61. Rd8 Rxc7 0-1


反省の多いゲームでした。2,3R は多少冷静さを取りかえして試合ができましたので、明日の残り3試合で挽回したいと思います。

上位は意外と全勝が少なく、1B で馬場さんを破った小林くんのみが3連勝。以下、南條くん、山田くんらが2.5P で続きます。私ももうひと踏ん張りして、優勝戦線に絡みたいですね。それでは2日目もよろしくお願い致します。

2017/07/10

Chess Meeting with GM Robert Hess


昨日はアメリカから来日中のGM Robert Hess とチェスをする機会を設け、短い時間ではありますがチェス交流会を行ってきました。91年生まれのHess は、元日本代表でFM でもある、上杉晋作くんのアメリカでの同級生で、ドレスデンオリンピアードではアメリカ代表も務めています。その縁で、来日を知った晋作くんのお父さんがコンタクトを取ってくれ、今回の企画が実現しました。急な呼びかけにも関わらず、集まってくれたIVL のメンバーにも感謝します。

今回、3時間という限られた時間でしたので、集まった6人で白黒両方での総当たり戦、3/2 のブリッツでダブルラウンドロビン、10ゲームという内容になりました。Hess は初戦から白星の山を築き、日本のトップ勢を圧倒していきます。私は白番で悪くないポジションにしましたが、気が付くと時間落ち... 他のメンバーや、ラウンドロビンとは別枠で指した南條くんも、良いゲーム展開になることもあるものの、逆転や時間落ちで負けとなりました。


最終結果はこの通り。Hess は私たち相手に白黒全勝でした! 私も普段、オンラインでブリッツは指すものの、オフラインで3/2 をここまで真剣にやったのは久々で、GM とは経験が違うと感じました。Hess は途中で時間を使うポジションがあっても、要所要所で判断が早く、そして時間が決して落ちません。アメリカの大会では、クラシカルの合間にブリッツの大会が開催されることが多く、アメリカのプレーヤーは日本のプレーヤーよりも、圧倒的にブリッツに慣れています。もちろん、序盤の知識やテクニックもGM ならではのものでした。


もっと長い持ち時間の試合をすれば、それはそれでGM としての技術を見せてくれたことでしょう。それは次の機会の楽しみにしておきます。休暇中に私たちの呼びかけに快く応じてくれたHess と、コンタクトを取ってくれた上杉さんに深く感謝いたします。今回集まれなかったメンバーも、また次回、マスターとの企画ができた際は交流ができると良いですね。

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