2017/10/02

Isle of Man International 2017 R9


優勝のスピーチをするCarlsen

今年もマン島のトーナメントが無事に終わりました。優勝は大会初日からトップを走り続けたCarlsen です! 最終戦も危なげなく、Hikaru とドローにして単独フィニッシュを決めました。Olympiad 以外でCarlsen と一緒のトーナメントに参加するのは初めてですが、今回あらためて世界最高峰のプレーヤーのレベルの高さを垣間見ることができたように思えます。

私は最終戦、ドイツのLebbe Nikolas との対戦です。去年同様、最終戦も白を持てるかと期待していましたが、不運なことに8R に続いて黒を引いてしまいます。なんでも指せるLebbe 相手の準備は大変でしたが、自分にとって好ましい形に持っていくことができました。

Lubbe, N (IM, GER, 2515) - Kojima, S (IM, JPN, 2403)
Isle of Man International 2017 (9)

1. e4 c6 2. Nc3 d5 3. Nf3 Bg4 4. h3 Bxf3 5. Qxf3 e6 6. d3 Nd7 7. Bd2 Qb6!?



トリッキーなラインを使うことの多いLebbe のようなプレーヤーは、Caro-Kann においては、セオリー勝負になりにくい Two Knights Variation を選択することがしばしばあります。ここ最近の大会でも、Two Knights に何を指すか悩んできましたが、今回、Dreev のゲームを見直してみて、これはと思う変化を見つけていました。

8. O-O-O d4 9. Ne2 c5


アイディアはNg8-Ne7-Nc6 からクイーンサイドを攻めることです。黒のキャスリングはどちらもありえますが、キングサイドのポーンが伸びてくるようであれば、クイーンサイドへ逃げるのが安全でしょう。

10. Kb1 Ne7 11. g4 Nc6 12. Qg3 O-O-O 13. Nc1!? Qa6!?



b6 をナイトのために空けるアイディアですが、b5 とa6、どちらがクイーンのマスとして相応しいか、少し悩みました。b2 を当てたままにしておくのも良さそうですが、b5 ではクイーンが浮いていること、bポーンを伸ばすチャンスがなくなることから、最終的にはa6 に決めます。他には全く考えていませんでしたが、すぐに13... Bd6 と指す手もあったようです。クイーンでビショップを取れば、Nd7-Ne5 がクイーントラップです。

14. Qf3!? Nce5 15. Qe2 Nb6 16. Nb3 Na4 17. f4 Nd7!?


e5 にナイトを跳んだ当初は、f2-f4 に対してc6 に戻るつもりでした。しかし、b6 のナイトが早々にa4 にいけたことを見て、もう1つのナイトもb6(チャンスがあればさらにd5)へ運ぶプランを思いつきます。

18. e5 Ndb6 19. c4!?



評価の難しい手ですが、d5 のマスを抑えたい気持ちは理解できます。黒は当然、これを崩して勝負です。

19... dxc3 20. bxc3 Be7?!



ここは悩みました。しっかりと見えていながら指すのをやめたのは、20... c4!? 21. dxc4 Ba3! 22. c5! (白はポーンを返して、Na4-Nb2 を防ぎます。) 22... Qxe2 23. Bxe2 Nxc5 24. Kc2= この変化で、黒は満足なエンドゲームながら、白のダブルビショップを相手にチャンスを作れるか自信がありませんでした。もう1つの指し方は、20... Nd5 21. Rc1 Kb8= とするもので、これならば黒はピースを残したままプレーできます。本譜よりもこのどちらかがベターでしたが、私はd3 のポーンを攻撃することをメインに考えました。

21. c4! Rd7 22. Ka1 Rhd8 23. Ba5?


白は、黒ナイトとクイーンの行き場をなくすというプランの方向性自体は良いのですが、ここで大きな間違いを犯します。私も指された瞬間はなるほどと思いましたが、よくよく考えてみるとポーンを取ることができます。代わりに23. Qe4! であれば、黒はナイトを組み替えるのに手数がかかるため、白がやや良いポジションだったでしょう。

23... Qxc4!-/+



指す前に何度も間違いがないことを確認しました。このクイーンを取るとメイトになるため、白はポーンダウンです。おそらくLebbe はナイトでc4 を取られないことのみを気にし、クイーンを軽視していたのでしょう。

24. Qf2 Qb5 25. Rc1 Kb8 26. Be2 Rc8 27. Rc2 Qc6 28. Rhc1 Qd5 29. Rd2 Rdc7


ポーンアップになった黒は、丁寧に反撃を抑え込もうとします。クイーンはやや危険だった白マスから脱出し、センターに戻ってきました。ここからはc5-c4 のタイミングを伺います。

30. Bf3 Qd7 31. Be4 h6 32. Qg2 Qb5! 33. Rdc2 f6!?



ここですぐに33... c4 34. dxc4 Rxc4 としても良かったですが、まずはe5 を弱め、これを取るチャンスを作りにいきます。クイーンがb5 のマスに移動したのは、c5-c4 のサポートだけでなく、e5 をターゲットにすることも狙いに含んでいます。

34. Qe2 fxe5 35. fxe5 c4! 36. dxc4 Qxe5+ 37. Kb1 Rxc4


ここは残り時間3分を切る前で考えましたが、c1 のルークを先にアタックしておくべきなのか読み切れませんでした。37... Bg5 38. Rf1 (38. Re1 Nxc4!! 39. Bb4 Na3+ 40. Bxa3 Rxc2 41. Bxc2 Nc3+-+) 38... Rxc4 39. Bd3 Qxe2 40. Rxe2 Nc3+ 41. Bxc3 Rxc3-+ これでも本譜でも勝勢です。

38. Bd3 Qxe2 39. Rxe2 Rxc1+ 40. Nxc1 Nc3+ 41. Bxc3 Rxc3



メイティングアタックこそ成功しませんでしたが、黒は満足な駒得でエンドゲームに入り、時間も40手に到達して増やすことができました。ここからは辛抱強く、ポジションを改善していきます。

42. Rxe6 Ba3 43. Re8+ Kc7 44. Re1


このアイディアでポーンを取りかえすのは、なるほどと思いました。ピースを交換してナイトビショップのエンドゲームにするのも考えましたが、a3 のビショップは白キングを抑え込んでおり、交換してしまうのももったいなく思えます。ここはじっくりいくことにしました。

44... g5 45. Bc2 Nc4 46. Nb3 Rxh3 47. Bf5 Rh2 48. Nd4 a6 49. Re2 Rh1+ 50. Kc2 b5 51. Bd3 Rc1+ 52. Kb3 Bc5 53. Nf5 Nb6!



少しプランが迷走しましたが、a4 にナイトを切り替えれば、白のキングは動けずに困っています。

54. Rh2?


粘るのであれば、54. Kb2 とするしかありませんでした。それでも黒はゆっくりポジションを改善し、勝勢でしょう。

54... Na4! 55. Bc2 Rg1! 56. Rxh6 Rxg4 57. Bd3 Rg2


g4 のポーンを取ってから、ルークでメイトを狙います。

58. Bc2 Rf2 59. Rh3 g4 60. Rg3 Kb6 61. Nh4 Rf4 62. Bd1 Bf2 63. Rxg4 Rxg4 64. Bxg4 Bxh4 0-1



メイトのチャンスを絡めながら、最後はナイトを取って勝ち。途中、ポイントが伸びずに苦しんだ大会でしたが、良い内容のゲームで締めくくることができて嬉しかったです。

2017/09/23 R1 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Dahl, B (ENG, 1974) 1-0
2017/09/24 R2 Xiong, J (GM, USA, 2633) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1-0
2017/09/25 R3 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Riazantsev, A (GM, RUS, 2666) 0-1
2017/09/26 R4 Birkisson, B (ISL, 2164) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 1/2-1/2
2017/09/27 R5 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Oyama, A (ENG, 2198) 1/2-1/2
2017/09/28 R6 Heimisson, H (ISL, 2185) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/09/29 R7 Kojima, S (IM, JPN, 2403) - Nihal, S (IM, IND, 2483) 0-1
2017/09/30 R8 Osmanodja, F (WIM, GER, 2245) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1
2017/10/01 R9 Lubbe, N (IM, GER, 2515) - Kojima, S (IM, JPN, 2403) 0-1

Isle of Man International 2017 Final Standings


今年も表彰式前のブリッツは非常に盛り上がっていました!


写真撮影一番人気はAnand でした。インドの若いプレーヤーも殺到していました。


かつて日本で働いていた、カナダのIM Leon Piasetski とは、6年ぶりの再会です。


今大会、妻と結婚してから初の海外大会でした。互いに1つ勝ちこし、レイティングは微減ですので、満足せずにこれからも一緒に邁進していこうと思います。大会後はハネムーンとして、ロンドンとパリに週末まで滞在します。

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